就活

2014年3月20日

“1億総批評家時代”のエントリーシートの書き方 霜田明寛の就活十番勝負3

shimoda3.jpgモデル:鈴木千尋(ミス専修コンテスト2013グランプリ)

 『くまのがっこう』っていうキャラクターが好きなんですよね。 いきなり何を言ってるんだって思うかもしれませんが、あと120文字我慢して下さい。 正確には、『くまのがっこう』っていう絵本の「ジャッキー」っていうキャラクターが特に好きなんです。12人兄弟のくまのお話で、ジャッキーだけ毛の色が違うんですよ。で、他の11人はみんな似たような顔をしていて、しかもちょっと偉そうなんですよね。

 就活生のエントリーシート(ES)を大量に机に並べて見ていると、なんか『くまのがっこう』みたいだな、って思うんです。みんな似通っていて、ちょっと偉そう。だから、その中に、ちょっと違う”偉そうじゃない”ESがあると、飛びついてしまうんです

 ということで、今回はESのお話。 ESにはそもそも、相手に偉そうに答えさせるようにできている設問が多くあります。例えば「最近気になるニュースとそれに対する意見を述べて下さい」「あなたの考える●●業界の●年後の未来」「あなたの嫌いな番組を教えて下さい」などなど。

 ですが、このトラップにひっかかってはいけません。こうした設問に対して、そのまま偉そうに答えた、まるで批評家のようなESがものすごく多いんですよね。 最近では、TwitterやFacebookなどで簡単に自分の意見を発信できて、それに対する承認もつきやすい。そのせいか、そうしたノリでESまで書いてしまう人が非常に多い。1億総批評家ESと言ってもいいくらいです。 

 で、この批評家ESは、ほかの多くの人と似てしまっているという点を除いても、大きな致命傷です。なぜいけないのでしょうか。そして、どう改善していけばいいのでしょうか。 まず、「あなたの考える●●業界の●年後の未来」「あなたの嫌いな番組を教えて下さい」といった質問は、企業側が、自分の業界や、自分の会社などについて聞いているのだ、というところが最初のトラップです。

 つまり、相手側の方がそのことについては詳しいのに、その上で意見を求めてきているのです。こっちは、その業界の人間ではないので、知識量で勝てるわけがありません。つまり、相手のフィールドに、素人なのに素手で殴りこみに行くような、まともに戦ったら勝てないような戦いを初めから強いられているのです

 だから、トラップに引っかかって、そのまま正直に偉そうに批評してしまうと、「そんなこと知っとるわボケ!」「じゃあお前が作ってみい!」的なツッコミが入り、怒りを買ってしまいます。 合コンにたとえれば、初対面の男に「俺の10年後、どうなってると思う?」とか「俺のイヤな部分ってどこだと思う?」と聞かれているようなものです。「知るか! 帰る!」といったリアクションをとりたくなるような質問なんですが、企業に聞かれたからには、ちゃんと答えなくてはいけません。

 では、どのように書けばいいのでしょうか。真っ向から、まともには戦わず、でもちゃんと勝負はする。そのためには、どうすればいいのでしょうか。 それは、答えの中に自分を含めること、です。 優れた批評家は、必ず、”その人でなければ書けない批評”を書きます。

 しかし、1億総批評家のESは、誰でも言えるレベルのものが書かれています。 もちろん、ESのその設問では、意見を求められています。ですが、ESを通して最も伝えなければいけないのは、”意見”ではなく”自分”です。”自分”が透けて見える”意見”でないと意味がないのです。

 だから、優れた意見でなくてもいいので、自分にしか言えない話にしなければいけません。 例えば、これは実際にあった例なのですが、「テレビ業界の5年後はどうなっていると思いますか?」という設問に対して、こんな回答をし、内定を勝ち取った人がいました。

 最近、テレビに少しだけインタビューされたことがありました。一方、同じネタでネットニュースにも取り上げられましたが、そちらの方が内容は詳しかったにも関わらず、友達からの連絡の量は、テレビの時の方が10倍以上でした。5年以上前から「ネットがテレビにとって代わる!」といった言説がきかれていますが、私の実感では、まだまだテレビの影響力は甚大で、5年後もきっとそれは変わらないのではないか、と考えています。

 この答えの素晴らしいところは、自分の実感をもとにした意見であり、結局はテレビの未来語りをしながら、自分の話ができているところです。このESを見た面接官からは、「どんなネタで取材されたの?」「何の番組?」「テレビに出た後、友達からはどんな反応が来た?」といった質問が飛んできたらしく、面接ではさらに詳しく自分の話ができた、とのことです。

  実は、この回答は、5年後の未来を明確に語っているわけではありません。むしろ「変わらないんじゃなーい!?」と曖昧に流しているだけ。それでも、ちゃんと評価はされるのです。もちろん、関連書を何冊も読み込み、客観的なデータに基づいて、さらに自分の独創的なアイディアが語れるのであれば、それに越したことはありません。

 でも、そうでないならば、このような、”自分”が透けて見える”意見”、むしろ、意見を語っているようで、自分のことを語れるような答えを返すべきなのです。 これは例えば、番組の企画や、ニュースについて聞かれても同じことです。その企画やニュースについて説明過多になってしまっては、自分が伝わりません。 ESや面接での目的は、番組の企画を通すことでも、相手にニュースについて理解してもらうことでもありません。あくまでも”自分”を伝えることです

 そのためには、企画やニュースをフックに、それらを”道具”くらいに捉えて、自分を押し出していかなければいけません。限られたスペース、限られた時間の中で、自分をちょっと遠くに置いて、第三者ズラして”批評”している余裕はないのです。 みんなが上から”批評”をしているときに、自分の話を下からしっかりできれば、きっと”毛色の違うジャッキー”として重宝してもらえるハズです。

POINT

  • 高尚な意見は必要ない。あくまでも意見を通じて”自分そのもの”を伝える
  • 伝える必要があるのは、企画でもニュースでもなく”自分”

 

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霜田明寛 (しもだ・あきひろ) 1985年生まれ、東京都出身。国立東京学芸大学附属高等学校を経て、早稲田大学商学部を卒業。2008年の大学在学中に、第四回出版甲子園準グランプリを受賞し、執筆活動を始める。雑誌記者・ライターとして活動する傍ら、『夢をかなえるゾウ』著者の水野敬也氏に師事し、『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!』『マスコミ就活革命(レボリューション)~普通の僕らの負けない就活術~』の著書を出版。 その後、就活生相談や全国の大学からの講演依頼が殺到。アナウンサーをはじめ、テレビ局、出版社、広告代理店など、マスコミを中心に多くの就活生を送り出す。2013 年からはPR会社に勤務する傍ら、早稲田大学で就活講座を担当。主宰するセミナー『就活エッジ』も好評を博している。

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