10月に入り、「内定式」を済ませた大学4年生は、いよいよ社会人になるタイミングが近づいてきました。 希望のところに受からず、就職浪人を決めた人は、ちょっと一休みといった感じでしょう。
一方、これから初めての就活にのぞむ3年生は、すでにOB・OG訪問を開始し、準備に余念がない人もいれば、まだのんびりしている人もいることでしょう。 前回、面接で、「他人を演じようとする人」は落とされるという話をしました。自分が勝手に想像した「内定をもらえそうな人」を演じようとするあまり、ありふれた自己紹介や自己アピールしか話せなくなるのです。
それよりも、たとえネガティブなことでも、自分の失敗談や挫折について話をしたほうが、ずっと自分らしさが伝えられます。「面接ではポジティブな話しかしてはダメ」と思い込んで、さも失敗や挫折などなかったかのような受け答えをする人もいますが、それではかえって人間味が感じられなくなってしまうのです。
私は、就活アドバイザーとして、学生から相談を受けたときに、紙に「自分の変わっているところ」リストを書いてもらいます。そうすることで、その人の本質的なものが見えてくるからです。 「自分の長所や強み」とか「これまでがんばってきたこと」を書いてもらうのではダメです。それでは、「自分がどう見られたいのか」という建て前がわかるだけ。
短所も含めて、自分が「変わっているところ」を、具体的に、10個以上書いてもらうのです。 なぜ10個以上なのかというと、「自分が変わっているところ」と言われてすぐ思いつくようなものは、意外と変わっていない、普通のものだったりするのですが、数合わせのように書いたもののほうがその人らしさが出ていたりするからです。
ここで、実際に書いてもらった「自分の変わっているところリスト」を紹介しましょう。 これは、ある大学の経済学部に所属していたテレビ局報道記者志望のNくんが書いてくれたものです。
(1) 6歳のころから競泳を始める
(2) 大学1年生のときに、ライフセービングを始める
(3) 趣味は料理
(4) 大学では経済学部で、公共環境が専門
(5) 農業経済のゼミで、部落差別と農業の関係について学ぶ
(6) 特に力を入れてやっているのは、ドキュメンタリー制作
(7) ペットロスについてのドキュメンタリーを制作した
(8) 戦時中にパイロットだった92歳の男性についてのドキュメンタリーを制作
(9) 台湾人の学徒出陣についてのルポルタージュを執筆した
(10) 実はフェルトアートが得意
(11) フェルトアート作家のドキュメンタリーを制作した
(12) テレビ局では報道記者になりたい
Nくんは、非常に体格がよくて、いかにもスポーツマンらしい、ハキハキとしたしゃべり方をしていました。大学で力を入れて学んでいるのは、「ドキュメンタリー制作」でした。しかも、「ペットロス」や、「92歳の元パイロット」など、“社会派”のテーマを題材に選んでいます。私が意外に思ったのは、「フェルトアート」という聞き慣れない言葉を見つけたときです。 フェルトで本物そっくりの犬や猫を作った作品の写真を見せてもらったところ、こう言ってはなんですが、ムキムキのラガーマンのような体型をしているNくんが作ったとは思えない、とてもかわいらしいものでした。
Nくんは、フェルトアート作家のドキュメンタリーを作りたくてお願いにいったのですが、作家の方は、どうしても自宅の工房を撮影させてくれなかったのだそうです。その方がテレビで紹介されたときも、工房の映像はありませんでした。 どうすれば工房を撮影させてもらえるのか。作家の方を説得するために、彼はフェルトアートの教室に2カ月間通いました。そのおかげで、彼自身もフェルトアートづくりが上達していったのです。そしてついに認められて、密着取材が許され、工房も撮影できたのでした。
私が「フェルトアートの話題を中心にして面接での自己アピールを考えてみよう」と言うと、案の定、彼はとても意外そうな顔をしていました。でも、このエピソードは、彼の粘り強さがよく表れています。しかも、本職のテレビ局の人が撮影できなかった自宅の工房を撮影しているのです。これは説得力があります。
結果として、「フェルトアート」の自己アピールは、面接担当者に高く評価されました。 このように、「自分の変わっているところリスト」を書き出し、それを人に見せると、自分では気づかなかった、自分らしさがよく伝わるエピソードがわかります。ぜひ試してみてください。 『面接で泣いていた落ちこぼれ就活生が半年でテレビの女子アナに内定した理由』 霜田明寛著