政府が4月29日付で発表した2024年春の褒章で、東大からは石原一彦名誉教授、沖大幹教授(東大大学院工学系研究科)、納富信留(のうとみのぶる)教授(東大大学院人文社会系研究科)が紫綬褒章を受章した。
石原名誉教授はバイオマテリアル(生体への移植が可能な医療材料)研究が専門。産業界とも連携し、細胞膜表面の構造を再現できるリン脂質ポリマーの効率的な合成・精製法を確立した。これにより大量生産が可能になった同ポリマーを利用し、人工股関節の臨床応用を東大医学部整形外科と連携して実現するなど、医療機器の実装に関する研究・普及活動にも尽力した。
沖教授は水文学(すいもんがく)(地球上の水の循環について総合的に研究する学問)が専門。地球規模の水循環と人間社会とを包括的に研究する「グローバル水文学」を提唱し、国内外で水問題解決に向けた政策立案に携わってきた。今年3月には水に関する優れた業績を挙げた人や団体に贈られる「ストックホルム水大賞」の日本人として3人目の受賞者に選ばれた。
納富教授はプラトンを中心とした古代ギリシア哲学について西洋古典学の手法も用いて研究し、哲学の原像を探ってきた。07年から3年間、プラトン研究の学者から構成される国際プラトン学会の会長も務めた。
紫綬褒章は学術、芸術、文化、科学技術開発などの功労者に対して国が年に2回授与している栄典。今回は計19人に贈られた。