内閣府は3日、2016年秋の紫綬褒章の受章者を発表した。東大関係者からは幾原雄一教授、古澤明教授、水野哲孝教授(いずれも工学系研究科)の3人が受章した。
幾原教授は、陶磁器に用いられるセラミック材料などの、さまざまな材料を構成する粒子の境界面を研究してきた。「基礎的な研究が評価され大変うれしい」と喜びを語った。受章の理由を「境界面の原子・電子の構造を詳しく解析する手法の世界に先駆けた開発や、境界面の構造が材料の性質に影響を与える仕組みの原子レベルでの解明が評価されたと思う」と分析。今後の展望については「開発した手法で境界面の構造と材料の機能の相関を明らかにし、新しい機能を持つ材料を作りたい」と話した。
古澤教授は二つの量子間で瞬時に情報を送る「量子テレポーテーション」という技術を20年にわたり研究。98年に世界で初めて特定の条件に頼らない量子テレポーテーションの実現に成功するなど、分野を開拓してきた。計算速度が従来のコンピューターの1億倍速い、ともいわれる量子コンピューターの実現に向け「研究成果を踏まえて努力したい」と抱負を述べた。
水野教授は触媒を用いた化学反応を研究してきた。化学反応の際の環境負荷を軽減する触媒の生成など、多くの業績を残している。
紫綬褒章は、学問や芸術、スポーツなどの業績をたたえ、毎年春と秋に与えられる。今回は体操の白井健三選手ら30人が受章した。
◇幾原教授のコメント全文
――紫綬褒章の受章についてどのように感じたか
これまで行ってきた基礎的な研究が評価されて大変うれしく思います。
――具体的にどのような功績が評価されたと考えるか
最先端透過型電子顕微鏡法と第一原理計算手法を高度に融合することで、材料機能に直結する界面の原子・電子構造を多角的かつ定量的に評価・解析する手法や軽元素の直視法を世界に先駆けて提唱・開発したこと。また、これより、これまで不明であった種々の材料の機能発現メカニズムを原子レベルで解明したこと。
――今回の受章を受けた今後の展望は
今後は、本手法を基盤にして、界面原子・電子構造と機能特性の相関性を明らかにし、これまでにはない新規な機能材料を創出することを目指したいです。
◇古澤教授のコメント全文
――紫綬褒章の受章についてどのように感じたか
私の研究分野は非常に新しいので、それにスポットライトが当たったのはとてもうれしかったです。
――具体的にどのような功績が評価されたと考えるか
量子テレポーテーション一筋20年研究してきたので、それが評価されたのだと思います。
――今回の受章を受けた今後の展望は
今後は、これまでの成果を元に量子コンピューターの実現に向けて努力したいと思っています。
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この記事は、2016年11月22日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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