キャンパスライフ

2017年12月2日

【世界というキャンパスで】額田裕己さん③ 絶景を背にして湖畔を快走

 卒業後に僕がまず向かったのは南島の南の果て(正確にいうと最南端ではないのだけど)クイーンズタウンだった。そこで11月に開かれるクイーンズタウン国際マラソンにボランティアとして参加するためである。またニュージーランドを縦断するにもはるか南のその都市はスタート地点として好都合だった。ちなみにニュージーランドは北島と南島の二つに分かれており、僕が語学留学で滞在していたオークランドは北島の北部にある。

 

 クイーンズタウンは良くも悪くも最も印象が強い街だった。初めての1人暮らし、バックパッカーの旅がここからスタートしたからである。最初は悪戦苦闘である。料理、これがまず難しい。どうにかいくつかの簡単な料理はできるようになった。しかしある時小麦粉を買いすぎて消費せねばならず、小麦粉を使ってできる料理はパンケーキだけ。結果1週間パンケーキしか口にしない生活を送ったのもここクイーンズタウンである。

 

 バッパーでの生活の仕方を覚えたのもここである。バックパッカーが滞在する、一部屋にいくつもあるベッドのうち一つを借りて滞在する形式の安宿を、通称バッパーと呼ぶ。(バックパッカーズの略である)。イメージが難しければ、映画「ハリーポッター」にでてくるグリフィンドール寮みたいなものを想像してくれたらいい。要は他人と一部屋をシェアして暮らすのだ。これが楽しいのである。プライバシーのかけらもない宿だから、苦手な人は苦手だろう。しかし僕は一人旅の身で、出会いに飢えていた。誰かと話したい、友達になりたい。そんな思いで同室になった人には片っ端から話しかけた。大抵話しかける相手は英語圏からの旅行者だったが、英語力のレベルの違いなどはどうでも良いと思えた。

 

クイーンズタウン国際マラソンのスタート地点となったワカティプ湖(写真は額田さん提供)

 

 最大のイベント、クイーンズタウン国際マラソンはすぐにやってきた。大会前日はボランティアとして会場設営を手伝ったのだが、当日はついでに走ってしまおう、と思い立ってレース参加を申し込んだのだ。11月19日の朝、自分を含めた10キロレースの参加者はスタート地点であるワカティプ湖畔の丘へとバスで移動する。クイーンズタウン自体がこの湖の湖畔に位置しているのだが、この丘から見下ろしたワカティプ湖がまた絶景なのである。まだ肌寒い朝9時にレースはスタートした(ニュージーランドはこの時春である)。レースは美しい湖のほとりに沿って進む。僕は最初から飛ばした。先頭集団は同様に飛ばしている人が多いから、少しの間我慢して走れば一人二人とこぼれ落ちてくる。それを捕まえては抜いていく。抜いていくおじさんに「君速いな!」と声をかけられ、気を良くしながら前に脚を進める。残り1キロでスパートをかけてゴール。タイムは平凡だったが、なんと20歳未満の部で2位を取ってしまった。嬉しい驚きである。

 

 走り終えた後に、その場で出会った人と健闘を讃え合い、一緒に街へ繰り出すというのも一人旅ならではの経験であった。

 

ゴール後の額田さん(写真は額田さん提供)

 

(寄稿)=続く

 

 

【世界というキャンパスで】額田裕己さ

【世界というキャンパスで】額田裕己さん⑦ 旅で得たもの いつか分かる

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この記事は2017年11月21日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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