僕が日本をたったのは2016年の8月も末の29日である。行き先はニュージーランド。1月末までの5カ月の滞在期間のうち、前半2カ月半は語学学校における英語の学習、後半2カ月半はバックパックを背負ってのニュージーランド南北縦断旅行である。
この留学兼旅行の目的は三つあった。一つ目は英語を身につけること、二つ目はスポーツボランティアをすること。そして最後の一つはバックパッカーとしてニュージーランドを南から北へ縦断することである。生まれてから19年間、新幹線すら1人で乗ったことのない僕にとっては大冒険である。
なぜ右の三つに目的を決めたのか。英語に関しては高校生の頃から話せるようになりたい、という思いが強かったからだ。またスポーツボランティアについては、僕が中高6年間は陸上競技部に打ち込んだ人生を送っており、その経験を活かしたいと思ったからである。最後に、バックパッカーとして一人旅をしようと思ったのは、かつて読んだ沢木耕太郎の「深夜特急」という1冊のエッセイに憧れたからである。その本で彼はインドからロンドンまで乗り合いバスで行く、という壮大な旅行に挑戦した。もちろん一人、バックパッカーとしてである。もしこの1年間の休学の機会を逃すと、海外を一人ふらつくなんてことをする余裕は自分の将来どこにもない。その考えが僕を一人バックパッカーの旅に駆り立てた。
こうして僕は入学願書とともにFLYプログラムへの参加希望書を出し、運良く面接に合格し、5月にFLYプログラム第4期生として正式に採用された。それから4カ月ほどは陸上競技会やマラソン会場などでスポーツボランティアをしつつ、アルバイトで旅費を貯めて着々と海外渡航の準備を進めた。行き先のニュージーランド、これはFLYプログラムに採用された直後に決めていた。理由は簡単である。僕はオセアニアが好きなのだ。こう言うとオセアニアに通い詰めた旅行者のような雰囲気が出るけれど、そんなことはない。高校2年生の時、修学旅行でおとずれたオーストラリアに感動した。それだけの話だ。しかし初めて海外を訪れた17才の僕にとって、オーストラリアで触れるもの全てが刺激的であった。優しくフレンドリーな人々、日本と真逆の気候、スケールの違う大自然。もしまた日本を出る機会があったなら、オセアニアに行こう。そう心に決めていたのだった。
8月末、僕は成田空港からオークランド空港に向け直行便で日本を発った。隣の席にはニュージーランド人だろうか、白人の男性が座る。客室乗務員も皆英語で話しかけてくる。いよいよ初めての海外一人旅が始まるのか。心からの実感が湧いてきた僕は、拙いジャパニーズ・イングリッシュで機内食を頼みながら一人気分を高ぶらせた。
(寄稿)=続く
【世界というキャンパスで】額田裕己さん
この記事は2017年10月17日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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