「FAKE FUTURE」をテーマとするメディアアートの展覧会が、11/17(木)~ 11/21(月)に本郷キャンパスで開催されている。
東京大学制作展は、学生が中心となりコンセプト設定・展示物制作・運営を行う、メディアアートを中心とした作品の展示会である。前回の記事では、この展覧会の開催概要、序章となった今夏の制作展「補序線」の様子を紹介した。
「FAKE FUTURE」それは「ありえない未来」
学生ひとりひとりが「ありえない未来」を発想した世界を展示します
その世界にこそ隠れた真実を見出すことができるかもしれません
開催初日となる17日、会場の工学部2号館は普段のアカデミックな雰囲気とは一変して、個性豊かな作品と来場者らで賑わいを見せていた。
■「OH MY BABY」
櫻井瞭 石見和也 廣畑功志
本作品は、無機物を含めあらゆるモノに人工知能が搭載された未来を想像した。
そして、意識を持ったモノと生活するうちに、人がモノと恋に落ちてしまう可能性があるのではないかという仮説のもと、数あるモノの中でも、恋愛がイメージしにくい「たわし」と人間の女性の恋愛模様を表現した。
もしその世界でモノと子供を産む技術が完成していれば、実際に無機物と子供を持ちたいと思う人は現れるのだろうか。
普通にデートして、普通にプロポーズして、普通に赤ちゃんまで産まれて、「まさかありえない」と思う未来のなかに、「恋愛すること」「子供を作ること」の本質を見出したいと考えている。
あなたにも、幼い頃から大切にしている「ぬいぐるみ」や、肌身離さず携帯してる「スマホ」と、恋に落ちてしまう未来がやってくるかもしれない。
■「Re-body」
佐藤邦彦
仮想空間上で身体はデジタル化される。
身体を構築する単位は、細胞ではなくピクセルになる。
アナログの制約から解放された身体は、容易に再構築・再破壊可能になる。
本作品は、仮想空間上の自己に触れることができるインタラクション作品である。
等身大に映し出された自己の姿に触れると、姿を構成するピクセルは動き出す。
動き出したピクセルの運動は周囲のピクセルへと広がり、連鎖的な運動をもたらす。
触れたことによって、自己を構成する形は破壊されてしまう。
しかし、仮想空間上では、また新たに自己の姿を作り出すことができる。
自己を作っては壊し、壊しては作る。
現実世界に重たく残ってしまった身体性から解き放たれる喜びを、お楽しみいただきたい。
■「Walking in the Memories」
青木大樹
自由な時間遷移と気ままな空間移動を駆使し、時空間を支配することが子供の頃からの私の夢だった。
そして今、セカイを点でも線でもなく、面として解釈するようなミライにおけるTime Machineをソウゾウした。
本作品では、過去の2つの制作展(「グッドバイ・マイ・ボディ」、「補序線」)と今回の「FAKE FUTURE」を時間軸ごとに異なる位相として表現し、位相内・位相間の空間を自由に行き来する体験を提供する。
自らの身体を用いることで、時空間移動により一層の現実感を得ると同時に、現在と過去、過去と未来の空間と時間の連続性をご体感ください。
■「生き-モノ、+move」
中山桃歌
直線上にただ逃げるという単純な動きは、ミニマルな形状である黒い箱にすら人に生き物を想起させた。
これからの未来、あらゆる物がロボット化していくかもしれない。
現在でも掃除機はルンバになり、人とのコ ミュニケーションの間にペッパーが入った。
では、直線上にただ逃げるというこの単純な動きを、あらゆる物がするようになったら、人はあらゆる物を物ではなく、生き物と考えるようになり愛着を持つようになるのだろうか。
電池が切れたら悲しくなったり、自分の思い通りに動かせるということを聞いてくれたよう に感じ嬉しくなったり、そこに物以上の価値を見出すのであろうか。
黒い箱とハンガー。
物が生き物へと変化するのかどうか、体験して欲しい。
■「READY TO CRAWL」
杉原寛
機械が生物のように産まれ動きだす未来を考える。
生物が一つの完成した身体を持って産まれるのに対し、機械はバラバラの部品を組み立てて初めて完成する。
これは単純なからくり人形から今日の精巧なロボットまで共通する、生物との根源的な違いである。
しかし、3Dプリント技術は細かい層を積み上げるように造形することで、機械を組み立てられた状態で出力することを可能にした。
この原理を用いれば、遠い未来、極限まで多材料・高精度でのプリントが可能になれば、あらゆる機械が生物のように造形機から産み出されると考えられる。
造形機から産まれよちよちと歩き始める機械に愛らしさを感じるだろうか?
あなたより遥かに高性能な機械があなたと同じように産まれてくる時、あなたは生物として のアイデンティティを保てるだろうか?
本作品は、現在の3Dプリント技術で一体造形可能なレベルで、そんな未来の機械をプロトタイピングしたものである。
■「Hello Kengoro」
片山健 浅野悠紀 川村将矢 矢野倉伊織 河原塚健人 牧野将吾
理想的なロボットのかたちは何だろうか?
有力な答えの一つは、私たち人間と同じかたち、すなわちヒューマノイドである。
2050年、ロボットが当たり前のように身の回りにいる世界。
彼らがあなたの友人であるような未来。
「Hello Kengoro」は、そんな未来にいるかもしれない。
人間に近い複雑な「かたち」を持つ、ヒューマノイド・ロボット「腱悟郎* 」と出会う作品。
あなたは彼のどこに「ロボットらしさ」を、どこに「人らしさ」を感じるだろうか?
そしてその感覚を、受け入れられるだろうか?
* 稲葉・岡田研究室の腱駆動ヒューマノイド研究グループで開発された人体模倣・筋骨格ヒューマノイド
今回紹介しきれなかった作品については、ぜひこちらを参照いただきたい。
夏に続いて、今年も冬の東京大学制作展がやってくる。ぜひ会場を訪れてメディアアートを体験しよう。
(文・構成:櫻井瞭、作品写真:淺田史音、会場写真:清水良広)
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第18回 東京大学制作展 「FAKE FUTURE」
日時:11月17日(木)~ 21日(月)(11:00 – 20:00)
主催:東京大学大学院 情報学環・学際情報学府
入場無料
会場:
〒113-8654 東京都文京区本郷 7-3-1
東京大学本郷キャンパス工学部2号館 (2階 展示室、フォーラム、9階92B)
アクセス:
東京メトロ南北線 東大前駅 徒歩7分
東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線 本郷三丁目駅 徒歩8分
東京メトロ千代田線 根津駅 徒歩8分
東京メトロ三田線 春日駅 徒歩8分
ウェブサイト:http://www.iiiexhibition.com/
Twitter:https://twitter.com/iiiEx
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