新入生にとっては東大に入学して間もないこの時期、キャンパスについてまだまだ知らないことも多いのでは? 慣れない生活を送る上でも、これからのキャンパスライフを過ごす上でもなにかとお世話になるのが生協だろう。今回は駒場Ⅰキャンパスの生協食堂(若葉、銀杏(いちょう))と購買に取材。知っているとちょっとお得にキャンパスライフを送れるかもしれない人気商品についての情報や普段使用しているだけでは気付かない入荷の基準など生協の新たな側面を探る。 (取材・佐藤健)
食堂 豊富なメニューを組み合わせて賢い利用を
食堂部店長の中村牧穂さんに話を聞いた。コミュニケーション・プラザ南館での運営は2007年4月から開始。1階をスタンダードで「毎日使える場所」として運営する「カフェテリア若葉」、2階をこだわりある東大オリジナルメニューを多く扱う「ダイニング銀杏」とする現在のスタイルが続く。
メニューは若葉も銀杏も週替わり。銀杏の人気メニューは年間を通じて提供されるが、その他は季節や気温、メニューの人気度や揚げ物、焼き物、炒め物などの種類や、価格のバランスなどで決められる。若葉ではおかずやデザートなども含めると毎日60種類ほど提供され、全部で100種類以上あるという。年に1回ほどリニューアルされる定番メニューの他、北海道フェアなどイベントごとのメニューとして毎月2週間限定で登場するものや、月ごとに変わる季節メニューもある。一言カードで寄せられた要望のうち、実現可能なものはなるべくメニューに加えるようにしている。「Twitterで毎週のメニューを掲載しているのでチェックしてみてください」
若葉の人気メニューはチキン竜田丼やグリルチキン(おろしだれ)。中でもチキン竜田丼は「いつ出しても人気」。銀杏で人気なのは玄米オムライスや油そば。「玄米オムライスは銀杏オリジナルの名物メニューで、3割程度のお客さんが注文します。新しい人気商品を作りたいですがなかなかオムライスには勝てないです」。注文が入ってから卵を焼くため、時間に余裕があるときに注文すると良い。食堂部の職員には14時以降に提供しているチュロスも人気。「もちろん学生にも人気です」
多彩なメニューはどのように作られるのだろうか。銀杏の油そばは、若葉の中華めんに対してオリジナリティを加えつつ「太麺をがっつり食べたい!」という要望に応え、麵探しから始まった。添加物などを考慮して仕入れ可能な食品から食材を選び、短時間で大量に調理可能かを確認。試食を経て、3カ月ほどかけてメニューに加えられた。「ラーメン好きな生協の職員や知り合いの学生などにも試食してもらいました」。「みんなが好きな味」を作るのが難しく、一言カードに寄せられる感想も改善に役立っている。
2019 年ごろまで提供していた駒場丼は学生と一緒に作った。「内容はほぼタコライスなのですが、チーズを銀杏並木に見立てたりしていたようです。駒場丼に特別に使用していた豚ひき肉が仕入れられなくなり、現在はタコライスをイベントメニューとして提供しています。機会があればオリジナルの駒場丼を学生さんと一緒に考えたいです」と中村さん。実際に学生団体と協力してビーガンメニューを作成しており、学生との連携をより積極的に行いたいという。
初めは、カレーライスなど安い定番メニューのみ注文する学生が多いが、慣れてきたらサイドメニューを組み合わせるのも醍醐味(だいごみ)。例えば、銀杏で提供される鮭丼には小鉢のオクラのお浸しとの組み合わせがおすすめだ。季節ごとに内容が変わる、コールドケースにある総菜コンビも栄養バランスも良く組み合わせに最適。4月はおからとほうれん草が提供される。
昼休みには多くの人で混雑する食堂だが、午後0時30分ごろには列がはけ始める。「混雑緩和のためには決済の早い学食マネーの普及が一番ではあるのですが、早く食べたいという人は若葉では、ゆで時間のかかる麺ではなく丼・カレーやカフェテリアのレーンに並ぶと良いかもしれません」。安く済ませたい学生は若葉のカフェテリアコーナーで複数の商品を選ぶと良い。ホットケースに入った福島産サバ塩焼きや豚生姜焼きなどにライスと味噌汁(豆腐・わかめ)を合わせるとお得だ。味噌汁は3月からリニューアルし塩分が少なくなったので、今まで以上に健康的な食事を安価に取れる。食堂を利用するときは参考にしてほしい。
購買 一言カードで学生の声を生かす
東大のマーク入りの商品から飲食料や電子機器、実験で使う白衣や製図用品まで、大学生活に必要なものがそろっているコミュニケーション・プラザ北館1階の購買部。「昔は現在21 KOMCEEがあるところに購買部がありました」と購買部店長の杉田豊さん。
コロナ前は一日最大約4000人の利用があったが、現在は3000人ほど。「新学期は来客が多いですが、だんだんと授業に出席する人が減るのか、来客も減っていきます。昔の諸手続では、上級生もたくさんキャンパスにやって来ていたので1年で一番混雑していましたね」。大まかにパソコンなどの新学期向けの商品、飲食料などの日常生活の必需品、教員が購入する授業や研究用の設備、それぞれが購買の利用の3分の1程度を占めていたが、コロナにより、オンライン授業が増え、飲食料の売り上げが減った分、スピーカーやマイク、通信機器などの売り上げが増した。コロナにかかわらずデジタル化の波を感じているという。「コピー機の利用はこれからも減少すると思います。チケットの取り扱いも少なくなりましたね」
お菓子の売り上げにも変化が。売り上げ数のトップは変わらず「ブラックサンダー」のような定番のチョコ菓子だが、近頃は健康志向の学生が増えたと感じている。「プロテインバーのような高タンパク質な商品が人気になっています。逆にエナジードリンクなんかは販売当初より減っていますね」。プロテインバーは売り上げ数がお菓子の中で3位ほどで、お菓子以外にもサラダチキンなどの売り上げが増えているという。
商品の入荷基準には「学生さんや教職員の方が利用したいと思えるものを取り扱っています」。組合員の声でハラール食品を取り扱うコーナーを設けるなど、入り口に掲示される一言カードの要望によって入荷を決める商品もある。「反映までは1カ月ほどで、要望に応えられないものもありますが、文具や食品が多いのでできる限りお応えできるよう努めています」。それ以外にも東大卒業生が作るクラフトコーラを東大新聞オンラインで知り入荷したり、運動部のグッズや学生団体が作った米を販売するなど東大関係者との協働も盛ん。「東大に関する商品も提供したいと思っているので、学生さんの作った商品や興味あるものなどもぜひご紹介ください」
客と店員という形だけではなく、さまざまな形で交流することで、使いやすいものとなることを目指している生協。時代に合わせて場所や商品を変えながらも存在し続ける秘訣(ひけつ)はそこにあるのかもしれない。