東京大学消費生活協同組合(東大生協)は昨年11月18日、吉見俊哉教授(國學院大學、東大名誉教授)をスピーカーとして招き、トークイベント「大学と東京大学の未来」を本郷書籍部で開催した。吉見教授の講演の後、東大生協理事長・玄田有史教授(社会科学研究所)が聞き手となり、東大や東大生協の未来について意見が交わされた。現地会場に集まった24人の他、オンラインでは30人が参加した。
吉見教授は社会を演劇に見立て、これまで都市や国家などがどのように「上演」されているかを研究してきた。最初の講演で吉見教授は、なぜ東大紛争を最終講義の題材に選んだのか、東大紛争はどのように「上演」されてきたのかを、さまざまな裏話と共に論じた。最終講義を業績の集大成ではなく東大に「決着を着ける場」として捉え、東大紛争の演劇的構造について話すことを決めたという。安田講堂で無観客という講義形態を採ったのは、紛争の「記憶の場」である安田講堂が語り出すような構図を演出したかったからだと語った。
対談では、英オックスフォード大学などの「ユニバーシティー」を目指した東大総長・南原繁、矢内原忠雄などの改革について語られた。吉見教授によると東大は「不幸だ」という。英オックスフォード大学とケンブリッジ大学、中国の北京大学と清華大学のように、世界大学ランキング上で張り合うような地理的に近い競合校が東大には不在だと指摘。その後も議論は続き、イベントは予定終了時刻を約30分超過するほどの盛り上がりを見せた。
東大生協の中島達弥専務理事は、学費問題の際に東大生協としての対応が総代会などで議論になったことを踏まえ、組合員同士が大学の未来を考えられるような場を生協として作っていく必要があると感じ、今回のトークイベントを開催したと話した。イベントは今後も継続して開催される。第2回は「現在と未来の大学」をテーマに開催予定。