学術ニュース

2020年9月24日

医学系 統合失調症の原因解明に進展

 長濱健一郎博士研究員(東大医学系研究科=当時)、狩野方伸教授(東大医学系研究科)らの研究グループは、SETD1Aと呼ばれる遺伝子の異常が統合失調症発症の一因である可能性を裏付け得る発見をした。統合失調症の病態解明や治療戦略開発への貢献が期待される。成果は9月15日付の米科学誌『Cell Reports』電子版に掲載された。

 

 研究グループは今回、統合失調症患者によく見られる遺伝子変異をゲノム編集技術で再現したマウスを作製。統合失調症の幅広い症状がマウスで再現されることを確認した。Setd1a遺伝子の発現低下により思考や創造性を担う大脳前頭前野で、興奮性のシナプス伝達が低下し、統合失調症の症状でもある社会性行動の異常がマウスに起きることも確認したという。

 

 今回の研究で、一部の細胞におけるSETD1Aの発現低下が社会性障害に関与することが明らかになった。今後は遺伝子変異マウスを利用して個々の行動学的異常のメカニズムを解明することによって、従来困難だった統合失調症の病態解明や治療法開発が期待される。

 

 統合失調症についてはこれまで、健常者の親から生まれた統合失調症患者に生じる、親が持たない新たな遺伝子変異が発症確率を上げると考えられてきた。しかし、遺伝子変異と発症のつながりの全貌は解明されてこなかった。


この記事は2020年9月22日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

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