参加者
新内(以下:眞)
22年度文I合格。私立浅野高校卒。セオリーにとらわれない大胆な合格論で東大英語をハックする。
清水(以下:条)
21年度文II合格。私立西大和学園高校卒。少年時代をアメリカで過ごした。メジャー仕込みの英語力でライバルを圧倒できるか。
松本(以下:梟)
21 年度文II合格。私立麻布高校卒。かつて東大オープン模試(河合塾)で 18 点(120点満点)を叩き出したこともある「英弱」ぶり。
金井(以下:井)
21 年度文III合格。県立長野高校卒。集合前に英語のオンライン記事のチェックをしていたところ「agritech unicorn」の意味が分からず遅刻した失態を取り戻す(農業技術系の新興巨大企業という意味らしい)。
ルール
• 現実の「ドラフト会議」さながら、自分の欲しい「英語の参考書」を順に指名していく。参考書は単語帳、英作文、文法書など種類を問わない。
• 参加者は「もし自分がもう一度東大を受験するなら」という設定の下、受験勉強に使いたい参考書を懸けて合計3冊分指名を行う。『赤本』シリーズ(教学社)などの過去問の対策本は獲得した3冊に加えて使用できるものとする。
• 同一巡で指名が重複したら抽選を行い、外れた人は外れ1位を指名する。
外れ1 位が重複した場合も抽選し、2位、3位 ….. と重複がなくなるまで続ける。
• 他人が獲得した参考書は指名することができない。
オープニングトーク
条 今日はお集まりいただきどうもありがとう。
眞 結構ジャンルが多くて苦労しました……。
梟 抽選で使うクジ、合格と不合格に分けとくわ。
注目株ひしめく1巡目は全員単語帳
梟 全員単語帳かよ(笑)。
眞 やっぱり帰国生でも無い限り、単語力が一番鍵になりますよね。
梟 そうだね。何でも良いからとりあえず 1冊終わらせるのが大事。
条 単語は車でいうガソリンみたいなものって例えを聞いたことあるわ。極論を言うなら単語さえ分かれば、文章は読み進められるからね。進む方向を制御できるハンドルはないけど。
井 ただ単語帳一つ取ってもここまでバリエーションがあるとは。
梟 やっぱ『鉄壁』だね。僕が通っていた高校だとほぼ全員使っている気がするし、すごく安心感がある。量は多いけど、逆にこんだけやれば大丈夫っていう自信にもつながると思う。
井 僕は『鉄壁』も持っていたけど、学校で配られた『ターゲット 1900』を推したい。レベルが三つに分かれているんだけど、レベル2までやればほとんどどの大学にも対応できると思う。あと対応するスマホアプリがある点とか、内容からちょっとずれるけどサイズがコンパクトで持ち運びやすいのも好き。
条 俺も周りみんな『鉄壁』使っていたけど、そこで逆張り精神が働いて(笑)。『鉄壁』使わずに受かってやろうって気になったんだよな。
『シス単』の使用権を懸けた運命の抽選(左から条、梟、眞)
『シス単』を獲得し、ガッツポーズを見せる条
条 単語ってただ覚えるだけでは意味がなくて、文章の中でどう使われるかをちゃんと理解するのが大事。その点『シス単』は例文が充実しているし、他大学にも対応できる汎用性の高さが売りかな。迷ったらこれを買っとけば間違いないと思う。
眞 『シス単』を獲得できなかったので、外れ1位として『大学受験スーパーゼミ 全解説 頻出英文法・語法問題 1000』(桐原書店)を指名します。
井 外れ1位、見たことないな。
眞 イディオム・語彙(ごい)・文法と幅広くカバーしてくれる演習型の問題集で。ただ「シス単」を取れなかったのは結構痛いですね。
霜康司・刀祢雅彦『システム英単語〈5訂版〉』 、駿台文庫、税込み1100円
鉄緑会英語科『改訂版鉄緑会英単語熟語鉄壁』 、KADOKAWA、税込み2310円
ターゲット編集部『英単語ターゲット19006訂版』、旺文社、税込み1210円
瓜生豊・篠田重晃『大学受験スーパーゼミ全解説頻出英文法・語法問題1000[増補改訂版]』、桐原書店、税込み1518円
「その使い方 !?」 荒れる2巡目
梟 これは……。どこから突っ込めば良いんだ(笑)。
条 問題児が2人も出るのは想定してなかった。
井 過去問は別に使えるルールだったけど言い訳させてくれ。地方公立出身で塾にも行ってなかったから、進度が遅くて過去問を形式通り解く時間なかったんよ。古い年度の問題は試験形式で解くんじゃなくて、東大長文のリズムに慣れるために寝る前とかに読んでいた。だんだん読むスピードが上がってくるのが自分でも分かって楽しいし、自信にもつながる。結構おすすめの使い方なんだよね。
梟 理にはかなっているかも。
条 英検準1級の面接対策本は隠し玉すぎるわ。
眞 面接ってある種の「瞬間英作文」だと思うんですよね。それに準1級の面接はたとえ内容が薄くても大丈夫だと思うんです。重視されているのは「作文の速さ」と「英語の正確さ」。この点がかなり東大英作文と似ているんですよ。
条 なるほど! その考え方は、俺が指名した『おも英』と同じだわ。結局入試の英作文って、その人の思考力とか表現力とかは問われないと思う。ある程度筋が通っていることを、正しく分かりやすい英語で書けるかどうかが一番大事。自分が実際に賛成か反対かとかは置いておいて、思ってもないことを理由つけてすらすら言えるようにした方がいい。
眞 合格者ってリスニング、英作文、和訳が高得点な人が多い気がします。要約とか空所補充は難しいですし、問題のバリエーションも多いですけど、結局この三つを制する人が勝つと思います。
梟 だから僕は『キムタツリスニング』を選んだよ。リスニングで 30点中20点(多くの東大模試の配点を参考)取れたら、他の問題がどんなにひどくても 70点台には乗せられそうだし。しかもリスニング以外は好きにペース配分できるけど、リスニングって確定で 30分近く取られるじゃん。時間配分が大事な東大英語において、この点ってかなり大きな制約だよね。だからこそリスニングには配点以上の重みがあると思った方がいいはず。
条 『キムタツのリスニング』って代えが利かないよね。英作文や単語は、東大受験に向けた質をある程度担保してくれる参考書が複数あるけど、東大リスニングはこれだと思う。
梟 そうそう! それに加えて、問題文の音声のスピードを変えられるのと、本のレベルによっては試験本番の環境を想定した雑音入りの問題があるのも推せる。
井 環境に気を取られたこともあって、僕は本番のリスニングで大失敗してるんだ。細かいことを気にしちゃうタイプだから、この本は知っておきたかったかも。
条 2巡目は結構クセの強い使い方をしてる人ばかりで驚いた。
眞 参考書って、個人個人に合った使い方が必ずあるはずなんですよね。それを見つけられるかどうかもかなり大切だと思います。
隙間を埋めろ! 3巡目指名
梟 さっきとは打って変わって王道の指名が続いたね。
条 『英文熟考』、再び駿台予備学校の竹岡先生の著作登場だね。恩師の活躍が喜ばしいわ。
眞 英文解釈の参考書です。採点基準とかは特に載ってないんですけど、訳し方のコツみたいなのが自然に身に付くんですよ。
梟 僕も和訳の参考書かな。やっぱり和訳って差がつくし、コンスタントにやらないと力が付かない気がする。
井 正直ここまでくると知らない参考書だらけだわ。『Vintage』は多くの高校で配られていると思うけど、実践問題を解きながら文法を網羅的に確認できる良著だと思う。文法って、センター試験から共通テストに変わって文法問題が消えた今では軽視されがちだけど、むしろすごく大事だと思うんだよね。精読のときは文法がないと何もできない。さっきは単語を車のガソリンに例えていたけど、それこそ文法は車でいうハンドルになるという話だよね。
条 文法は和訳でもかなり大事だよね。自分は高2の秋に帰国したんだけどやっぱり文法に一番苦労した。日本の大学入試って「倒置」とか「主語の省略」とかを訳させたがるけどあんなのがアメリカの現地校のテキストで登場することなんてほぼないし、作文でこんな表現使っていたら「イキリ」以外の何者でもないんだよな(笑)。そういう慣れない部分を、俺は『文読解の透視図』で訳出する練習ができた。
梟 よし、これで全指名がそろったね。
何を学び取れるかが大事
条 最後にこの企画の感想と、受験生へのメッセージを貰いたい。
井 僕は今日ここに出てきた参考書をほとんど知らなかった。参考書って基本全国どこでも買えるけど、その情報格差はやっぱり大きいよね。あとどの参考書を使うかも大事かもしれないけど、そこにとらわれすぎてはいけない気がする。学校で習う基本も大切にした方が良いと思うな。
梟 僕は参考書を本屋で買いに行く前に自分でいろいろ他の人の評価を調べてから買っていた。受験生って財力も限られているし、こういう下調べは入念にやった方が良いと思う。今日選んだ参考書はどれも評判良かったし、おすすめだね。
眞 今日は変化球を出せて良かったです(笑)。まあただ地域ごとの情報格差って結構あると思います。僕は周りに参考書オタクみたいな人が多かったので、その人たちから失敗談も成功談も情報を仕入れられました。たださっきも言った通り、参考書はその人に合った使い方があると思うのでそれを見つける努力は忘れないでほしいです。
条 今の受験生って俺らの時と比べて受験に関する情報とかインフルエンサーが増えてきているよね。そんな中でも自分を見失わず、自分にとって一番良い勉強サイクルを確立することが大事だと思う。これが東大から課された0次試験だと思って頑張ってほしい。
梟 参考書って結局ツールでしか無いからね。いろんな種類はあるけど、どれも言いたいことって大体一緒だと思う。その本質的な部分を学び取るのが一番大事だね。
獲得した参考書一覧(記事および表中の略称は非公式のものを含みます)