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2023年5月2日

「お前、頑張ってないよ」の言葉で再起 東大から理Ⅲを再受験

SSS Educationの自習室前で合格報告をする大久保さん(写真は大久保さん提供)

 

 1年間の浪人生活を経て、2020年に理Ⅱに入学した大久保友貴さん。進学選択で法学部に進学したが、休学して東大を再受験。この春から理Ⅲの新入生として、新たな学生生活をスタートさせた。再受験を決意した理由や、受験生時代の話について聞いた。(取材・松崎文香)

 

「頑張れなかった」浪人・駒場時代

 

──高校時代はニューヨークで過ごしたんですね

 

 日本の私立大学の一貫教育校に通っていました。物価が高いから気軽に友人と遊べなかったり、車で送ってもらわないと遊びに行けなかったりといった事情もあって、家で過ごすことが多かったです。

 

 大学については内部進学の人が多く、受験をする人は少数派でした。自分自身は、家の都合で内部進学は難しいと親から伝えられていましたが、なんだかんだ内部進学させてもらえるのではと楽観していたため、勉強に身が入りませんでした。高3の夏にいよいよ外部受験が決まり、勉強を始めたものの惨敗でした。理Ⅰを受験したのも、日本で通っていた中学校が進学校だったからと、なんとなくでした。

 

──その後1年間浪人し、理Ⅱに入学します

 

 浪人しても、あまり勉強しませんでした(笑)。志望校については、親に「東大に行くな」と言われたことで、逆に志望が固まりました。両親は医者になってほしいと思っていたようなのですが、当時は親に薦められたことをやりたいと思えなくて……。親への反発で、最後に粘って合格できたのかもしれません。周囲から「大久保がまさか受かるなんて!」と言われもしましたが、気にならないくらいうれしかったですね。

 

──再受験を決めた理由は

 

 東大に入学すると同時にコロナが始まって……、あの日々は最悪でしたね。薬学部への進学を親に反対されたこともあって、生活が荒れてしまいました。バイトや遊びばかりの、どうしようもない1年を過ごしました。

 

 自堕落な生活を送っていた時に、友人から「お前、頑張ってないよ」と言われたんです。自分でも思っていたことを他人に指摘されたので、刺さりました。「この1年も、そういえば浪人していた時も、結局頑張れなかったな」と思いました。しばらくは受け入れられず、バイトすら行けない時期もあったのですが、だんだんと「もう一度本気で頑張ってみたら、何か変わるんじゃないか」と思うようになり、再受験を考え始めました。本気で努力する対象はなんでも良かったんだろうと今は思いますが、過去の受験で頑張れなかったことが引っ掛かっていたので、理Ⅲ合格を目標にしました。

 

 医学部を志望したのは、東大の「初年次ゼミナール」という授業で再生医療に興味を持ったのが大きな理由です。浪人の時に通っていた予備校の周辺に医学生が多かったのも影響しているかもしれません。予備校近くのカフェで勉強している時に、周りで医学生が医学の教科書を広げていたのが、なんとなく気になっていたんです。当時は親への反発があり、志望には結び付きませんでしたが(笑)。

 

休学し、本気で挑んだ再受験

 

──東大に在学しながら理Ⅲを再受験するも、40点ほど足りずに不合格。学部3年が始まるタイミングで、休学してもう1年受験勉強に専念することを決めました

 

 休学に対してはかなり抵抗がありました。築いてきた人間関係もあるし、もしダメでそのまま就職活動することになったら、浪人や休学で2年遅れた理由をきちんと話せる自信もないし。最後に背中を押してくれたのは、親の「休学してもう1年やれば」という言葉でした。それまではずっと反発していたのに、なぜかその一言は受け入れられたんですよね。結局、予備校に通ってもう一度受験することを決めました。

 

 勉強で苦しかったのは、国語と英語の成績が伸び悩んだことですね。周りがハイレベルな理数系の演習をする中、自分だけ単語や文法を繰り返していて……。それでもやり続けられたのは、親の支えと「これで東大受験は最後にする」という覚悟だったと思います。大学1年生の時の自分がとにかく嫌いで「ここであきらめたら、結局頑張れなかった記憶がずっと残る」と思いました。

 

 Twitterを通じた受験生との交流や、東大の医学部卒業生との出会いも後押しとなって、なんとか合格できました。今は、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。1年、2年、よく耐えたなと……。現役や1浪目の時は天才がいくところと感じていた理Ⅲも、努力すれば届くんですね。

 

──東大受験にもう一度チャレンジしたいと考えている人に、メッセージはありますか

 

 今年の東大入試の英語の問題で「私たちはどの経験をするかを選択しなければならない。誤った選択をして貴重な時間を無駄にすることに対して、多くの人は深い恐怖心を抱くものだ」というような文がありました。受験会場にいた全ての再受験生が共感したと思います(笑)。

 

 東大受験に再チャレンジする人に対しては、頑張り続けるしかないと伝えたいです。頑張った先で必ず成功するとは言えなくとも、やるしかないですよね。仮に結果が伴わなくても、他の人との比較や外部から見て頑張っているかではなく、自分の中での限界だと思えるくらいに努力できたら、いつか吹っ切れるのかもしれません。

 

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