駒場Iキャンパスの野球場で練習を積む東大軟式野球部。早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学、立教大学、法政大学の各軟式野球部とともに東京六大学軟式野球連盟に所属している。今回は、4年生の引退を飾る23年春季リーグ戦の最終戦について寄稿してもらった。(寄稿=横山秀太・東京大学運動会軟式野球部)
軟式野球部春季リーグ第10戦 vs明治大学(5月24日)
明大|100000000|1
東大|00020000X|2
春季リーグ最終戦となるこの日、東大が対戦するのは明治大学。前回の試合では、乱打戦の末敗れた手強い相手である。
悲願の一勝を目指す東大は、中杉天耀(薬・4年)を先発マウンドに送った。昨年は投手陣の要として多くの試合に登板してきた中杉だが、今季は怪我の影響もあり、2回目の先発登板となる。
対するは強力・明大打線。やはり、この日も手強かった。中杉は、先頭打者にセンター前ヒットを許すと、盗塁と進塁打によって1死三塁とされる。その後、内野ゴロで2死としたものの、そこで迎えるは相手の4番打者。追い込んでから投げた1球はセンターへと弾き返され、早々に1点を失ってしまう。
明大の猛攻は二回表になっても続く。下位打線から始まるこの回、先頭打者を内野ゴロで打ち取るが、そこから2連打を浴び、1死一三塁のピンチ。そこで迎えた打者は、相手の先発投手。追い込んでからも粘られ、フルカウントから投じた1球はショートへと弾き返される。三遊間を抜かれていれば適時打になっていたであろう打球は、ショートライナーによる併殺打。中杉は、なんとか無失点でこの回を乗り切った。
相手優勢のまま進んでいく試合。二回裏、先頭の真田恒(育・3年)が左中間へ鋭い二塁打を放ち、無死二塁のチャンスを作ったが、後が続かない。東大はこの回も無得点に終わり、なかなか試合の流れを手繰り寄せることができない。
三回表、明大打線が2巡目に入ったところで、中杉から泉湧太(農・4年)に継投した東大。失点には至らなかったものの、四球と被安打により2死満塁とされるなど、ここも相手の強力打線に攻め立てられる。
とはいえ、四回表まで6本のヒットを許しながらも、1失点で耐えてきた東大。その甲斐もあったのか、四回裏、ついにチャンスが訪れる。
1死から、相手投手の2連続四球によって、1死一二塁。打席が回ってきたのは、今季リーグ戦で打撃好調の三宅偉斗(文I・2年)だ。打ったのは変化球だった。三宅は甘く入った初球の球を見事レフト前へと運び、その間に二塁走者が生還。ついに同点に追いついたのだ。
ここで相手は、投手を先発の坂井翔から古坊充輝へと交代する。2死二三塁となり、一打勝ち越しのチャンスで佐藤圭祐(理I・2年)が打席に立った。絶好のチャンスをものにしたい東大。一方の明大も、絶対に点を与えたくない状況だ。明大の古坊は、130km/h中盤の速球を投げ込み、佐藤を追い込む。しかし、それを上回ったのは佐藤だった。古坊の投じた5球目を逆らわずに流し打ち。佐藤の打球は三遊間を抜け、東大は勝ち越しに成功した。
その後の東大は、檜山岳(理I・2年)、林隼介(工・3年)の投手リレー。五回以降は、序盤にあれほどの猛攻を見せた明大打線も鳴りをひそめる。リリーフ陣の無失点リレーで1点のリードを守りきり、東大は今季リーグ戦最初で最後の「勝利」を手にした。たかが一勝であるが、最終戦に全員で勝ち取った価値のある一勝だといえる。
春季リーグ10試合を終えて、1勝8敗1引き分けという悔しい結果に終わった東大。4年生はこのリーグ戦をもって引退となり、来季リーグ戦は新チームで迎えることになる。だからといって心配することはない。4年生の引退試合を勝利で飾ることができたのは、2、3年生たちの力があってこそだからだ。これからは、新たに入部した1年生も加わり、来季以降のリーグ戦を盛り上げていってくれることだろう。