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2024年11月1日

【東京六大学野野球】立大1回戦 九回表2死から大逆転劇を見せるも ホームラン打たれサヨナラ負け

 硬式野球部(東京六大学野球)は最終カードを迎え、10月26日に立教大学とリーグ戦を戦った。九回表で逆転するもその裏でサヨナラホームランを喫し2ー3で勝ちを逃した。涙を飲む結果となったものの、八回表まで0ー0の見事な粘りは翌日の試合への大きな期待となった。(取材・高倉仁美、吉野祥生)

 

東大|00000000 2|2

立大|000000012X|3 

 

 9月14日に開幕した六大学野球も第7週に入り、東大は最終カードを迎えた。今季は2勝を挙げ、東大ファンに多くの感動を届けてきた。このチームならいけるかもしれない。そう期待させる数々のプレーを東大スタンドは目の当たりにしてきた。ここで勝ち点を獲得すれば最下位脱出も夢ではなくなる。その期待を背負い先発のマウンドに上がったのは、前カードの法大2回戦でチームを勝利に導いた渡辺向輝(農・3年)だ。

 

落ち着いた表情でマウンドに立つ渡辺(撮影・吉野祥生)
落ち着いた表情でマウンドに立つ渡辺(撮影・吉野祥生)

 

 ストライク先行のピッチングで渡辺は上々の立ち上がりを見せる。緩急を織り交ぜつつ3次元を駆使した渡辺ならではの投球で初回は三振を二つ奪い、2イニング三者凡退に抑えた。三回表では先頭打者にライト前にヒットを打たれ、バントでランナーを二塁に進められるも、後続を押さえて無失点。中盤の四回から六回もピシャリと抑えて、守備はトントンと進んでいった。

 

 一方、攻撃では、喉から手が出るほど欲しい先制点。二回表には6番・杉浦海大(3年・法)が左方向へ大きな当たりを飛ばし、東大スタンドから歓声が湧き上がるがファウル。四回表には今季唯一のホームランを放っている中山太陽(経・3年)がチーム初ヒットを打つが、チャンスにつなげられず無得点。

 

 五回表、先頭打席に立ったのは今季30打数3安打と不調の5番・大原海輝(文・3年)。が、そんな不振をよそに2球目をセンター前へ弾き返し出塁。盛り上がる応援歌、鳴り響く太鼓の音を背に、6番・杉浦は良いスイングを見せるもタイミングが合わず空振り。しかし、追い込まれてからの4球目、高めに浮いた変化球にバットを出して華麗にセンター返し、ノーアウトから連打となった。無死一、二塁と絶好のチャンスが到来し、東大スタンドの期待と比例するように歓声が一段と大きくなった。 

 

センター前ヒットを放った大原(撮影・吉野祥生)
センター前ヒットを放ち流れを作る大原(撮影・吉野祥生)

 

 下位打線に入り、まずは1点をもぎ取りたいところ。打席には、法大2回戦でサヨナラ適時打を放った、7番・門田涼平(文Ⅲ・2年)が入る。バントではなく、初球からヒッティングで強行した結果は、浅めだが一塁線寄りのライトフライ。タッチアップは厳しいように思われたが、打球がグローブに収まった瞬間、二塁ランナー・大原は三塁を目指してタッチアップ。右翼手は体を反転させて1本で三塁へ好返球し、大原のダッシュも及ばずクロスプレーは悠々アウト。三塁塁審が拳(こぶし)を挙げると同時にスコアボードには二つの赤丸が点灯した。流れを味方につけてじっくり攻撃して良いところを、痛恨の走塁死で好機を失い、スタンドからため息が漏れる。走塁死を喫した大原は悔しさを浮かべてベンチに戻っていった。

 

 続けて8番・渡辺が打席に立つが、ピッチャーゴロに倒れこの回も無得点。絶好のチャンスを逃してしまった痛い走塁死が悔やまれるも、行き先の明るい打撃が繰り広げられたのは期待となった。

 

 守備から手繰り寄せた流れをなんとか保ちたい思いで、七回表までスコアボードに両チーム0が並ぶ粘りの展開に。

 

無失点で抑えベンチに迎え入れられる渡辺(撮影・吉野祥生)
無失点で抑えベンチに迎え入れられる渡辺(撮影・吉野祥生)

 

 しかし七回裏、東大に危機が訪れる。好投を続けてきた投手・渡辺は先頭打者に今試合初の四球を許し、続く打者には一二塁間を破られ、無死一、二塁に。さらに送りバントをうまく決められ、1死二、三塁と厳しい状況に追い込まれる。だがここで渡辺の積み上げてきたコントロールと切り替える力が見事に発揮されていく。三振か内野フライで抑えたい場面で、相手5番・柴田を注文通り三振に切って取る。なんとか踏ん張って後一つ取りたいところ。だが続く相手6番・小林隼も粘っていく。大きなスイングでボールをカットし続けて7球目。少し甘く入った外角のボールを捉えて左中間へ大きな当たりが飛んだ。ここは、センター・酒井捷(経・3年)が追いつきしっかりと捕球。ガッツポーズを見せる渡辺に東大スタンドからは盛大な拍手が送られた。両者譲らない戦いに両スタンドは舌を巻いた。

 

 八回に入り、試合は予期せぬ形で動き出していく。攻撃では、2死から四球で出塁するも、後続が三振に打ち取られ無得点に終わる。だがその裏。7番・桑垣から始まる立大の攻撃。ストライクが先行し追い込まれるも4球目を逆方向へ打ち返し、打球はレフト前のライン際に落ちた。ここで桑垣は好走塁を見せ、今試合初の長打となる二塁打でチャンスメイク。続く相手8番・戸丸が二ゴロで進塁打を放ち走者を三塁へ進める。七回同様、内野が前進守備を敷きなんとしても無失点で切り抜けたいところ、相手9番・竹中の当たりはサードゴロ。しかし、サード・内田開智(文・4年)がファンブルし、バックホームできず。打者走者はアウトにしたものの、終盤に悔しくも先制点を許してしまった。

 

前進守備でバックホームできず悔しい表情を見せる内田(撮影・吉野祥生)
前進守備でバックホームできず悔しい表情を見せる内田(撮影・吉野祥生)

 

 だが所詮は1点だ。上位打線に戻った最終回。打席に立ったのは、大怪我から復活し不動の1番・センターとして東大ナインを引っ張ってきた酒井。慎重に球を選び、フルカウントに。だが相手投手は見事な力投で空振り三振を奪取。悔しい表情を浮かべつつ2番・山口真之介(薬・4年)にバトンをつないだ。しかし最後は高めの球を空振りし、三振に終わる。あっという間に2死になってしまった。

 

 最終カードとなる4年生の気持ちを背負い、3番・中山がバットを構える。東大スタンドからは、ここで終わってはならないと大きな声援が送られる。その声援に応えてか、中山は初球を左中間へ打ち返しヒット。応援席は出塁に盛り上がり、東大のベンチからも雄たけびが上がる。続いて打席に立ったのは、慶大1回戦から4番に抜てきされている内田。八回には先制点の献上に直結した記録に残らないミス。何としても取り返したいところ、悔しさをバネに内田は初球を打ち返し、打球はセンター前へクリーンヒット。まさに今カードで引退となる4年生の執念を見せた。

 

センター前へ安打を放ちチャンスを作る内田(撮影・吉野祥生)
センター前へ安打を放ちチャンスを作る内田(撮影・吉野祥生)

 

 2死一、二塁のこの場面で続くのは、春季リーグでベストナインを獲得した実力者の5番・大原。初球は外角いっぱいの変化球を見逃し、ストライク。2球目、大原特有の力強いスイング。ミートした打球は左中間へぐんぐん伸びていき、外野手の間を真っ二つに破った。大原の見事な適時二塁打でランナーが2人がホームイン。九回ツーアウトから逆転!!!奇跡のような逆転劇に観客同士は手を取り合い、拍手喝采が沸き起こる。底力を見せ大きな流れを引き寄せた東大。さらにダメ押しの3点目といきたいところだ。続けてバットを構えたのは、今試合2打席目でヒットを放った6番・杉浦。打ったボールは二遊間の深い位置へ。しかし、ヒットになりそうなところを相手セカンドがまわり込んで一塁へ送球し、間一髪アウト。立大のナイスプレーで攻撃が終了した。

 

大原の適時二塁打で逆転のランナーがホームイン(撮影・吉野祥生)
大原の適時二塁打で逆転のランナーがホームイン(撮影・吉野祥生)

 

 勝利がチラつく中、なんとしてでも無失点に抑えたい九回裏。マウンドに上がった渡辺は安定した投球を見せ、2者連続レフトへの平凡な当たりに。九回裏からレフトに入った榎本吉伸(文・3年)がフライをしっかり捕球し、ツーアウト。続けて打席に立った相手代打にはファウルで粘られた末に四球で歩かせ、ランナー一塁。しかし、目の前にある勝利を掴もうと応援は大きくなるばかりだ。勝利までワンアウト。あとワンアウト取れば、今季初の1回戦勝利となる。あとワンアウト取れば、7年ぶりの勝ち点獲得も現実味を帯びてくる。東大応援部チャンステーマ『不死鳥の如く』が響き渡る中、渡辺は相手5番・柴田と対峙する。2球目、強く振り抜いた打球はライト方向へ大きなアーチを描き、スタンドの中へ。

 最後の最後で立大にあまりにも痛い逆転サヨナラホームランを許してしまい、そのまま東大は敗戦した。

 

勝利まであと一人のところで被弾し、うなだれる渡辺(撮影・吉野祥生)
勝利まであと一人のところで被弾し、うなだれる渡辺(撮影・吉野祥生)

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