学術

2016年7月23日

【東大水泳部競泳陣寄稿】リオ五輪「競泳」の見どころ

写真は水泳部競泳陣提供
写真は水泳部競泳陣提供

 

 世界的にも競技人口の多い競泳。四年に一度の大舞台は8/6に開幕し、一週間に渡る熱戦が繰り広げられる。ここでは日本人選手の活躍、そして世界のスーパースターたちの活躍に着目したい。

 

 見せ場はいきなり大会初日にやってくる。競泳で最も過酷と言われる種目であり、この種目を制した者は「キング・オブ・スイム」の称号を与えられる400M個人メドレーである。というのも、この種目、日本勢での金メダル争いが期待できるからだ。前回大会覇者のロクテ選手が全米選考会でまさかの落選、世界記録保持者のフェルプス選手は出場を見送るなど日本勢のメダル獲得に追い風が吹いている。日本勢の萩野選手(今季世界ランク1位)、瀬戸選手(世界選手権連覇)は世界でも圧倒的な強さを誇っており、全米チャンピオンのカリシュ選手に「彼らに敵う選手は今いない」と言わしめた程。日本勢でのワンツーフィニッシュが期待出来そうだ。

 

 そして大会二日目。注目種目は100M平泳ぎと国の威信をかけた400Mフリーリレーだろう。日本競泳界のキングこと北島康介が引退した今、日本のお家芸と言われた平泳ぎも世界の強豪たちに押され気味だ。スピードに定評のある前回大会覇者のファンデルバーグ選手が飛び出し、世界記録保持者のピーティー選手が後半追い上げる展開が予想されるが、そこに日本の小関選手が食らいついていけるか注目である。

 

 400Mフリーリレーは過去二大会でドラマチックな結末を迎えている。2008年大会ではアメリカが、2012年大会ではフランスが、アンカー勝負を制して優勝している。今大会もアメリカとフランスの一騎打ちになりそうだが、意地を見せて優勝するのは果たしてどちらなのか?

 

 大会三日目。日本水泳界のプリンスこと入江選手が100M背泳ぎでついに登場。前回大会メダリストの入江選手に悲願の金メダル獲得の期待が高まるが、この戦い、そう簡単には行かなそうだ。前回大会覇者のグレーバーズ選手が全米選考会で破れる波乱の中、優勝したのは大学生のマーフィー選手。昨シーズンから急激に力を伸ばしており、昨年世界選手権覇者のオーストラリアのラーキン選手との競り合いの中で世界記録誕生の可能性も高い。またこの種目は1996年からアメリカが覇権を握っており、アメリカ勢はこれを守る事が出来るのかにも注目だ。

 

 大会四日目も目が離せない。男子200M平泳ぎと競泳の花形種目100M自由形が行なわれる。200M平泳ぎでは日本の山口選手が世界記録を持っており、この4年間破られていないが、世界記録の誕生が見られるかもしれない。前回世界新記録で優勝を果たしたハンガリーのギュルタ選手、昨年世界選手権チャンピオンのドイツのコッホ選手の一騎打ちかと思われたが、先日行なわれた全米選手権でUCバークレーのプリノー選手が世界歴代二位の好記録で優勝を飾ったことで勝負の行方は分からなくなった。日本の小関選手にはメダルの期待が十分あり、前半から飛び出す小関選手をギュルタ選手、コッホ選手、プリノー選手が追いかける展開となるが、誰がチャンピオンの称号を得るのか、最後まで分からない争いになりそうだ。

 

 100M自由形ではアメリカのエイドリアン選手とオーストラリアのマケボイ選手の優勝争いに注目だ。199cm 100kgと大柄なエイドリアン選手が二連覇を果たすのか、183cmと小柄で細身のマケボイ選手が勝つのか。パワーが勝るのかテクニックが勝るのか、目が離せない。

 

 大会六日目の200M個人メドレーが今大会一番の目玉種目だろう。アメリカの怪物フェルプス選手、世界記録保持者のロクテ選手、そして日本記録保持者の萩野選手が激突する。フェルプス選手は今大会での引退を表明しており、4連覇をかけて並々ならぬ気持ちで挑んでくる事だろう。32歳にあるロクテ選手も今大会での引退が濃厚であり、長年にわたるフェルプス選手とのライバル関係に有終の美を飾る事が出来るだろうか。今シーズン世界ランク一位の萩野選手がこの二人に割って入るのか、優勝して二人に引導を渡すのか、世界が注目するレースだ。

 

 個人的な話になるが、小生はロクテ選手の大ファンでありロクテ選手の金メダルに期待したい。ただ、全米選手権の際に痛めた足の付け根の状態がどこまで回復しているのか気がかりだ。

 

 大会最終日には400Mメドレーリレーが最終競技として行なわれる。日本チーム2004年から三大会連続でメダルを獲得しているが、今大会でもメダルを獲得する事は出来るのだろうか。前回大会では銀メダルを獲得し、感動を与えてくれたが、今回もメダルを獲得して感動を与えてほしいものだ。これが現役最後のレースになるフェルプス選手も金メダルを獲得して水泳人生を締めくくることが出来るのかも見どころだ。

 

 ここまで男子選手を見て来たが、女子選手も負けてはいない。多種目に挑戦し、世界のタイトルを総なめにしてきたハンガリーのホッスー選手。そのタフさからIron Ladyと呼ばれている。この選手、意外にもオリンピックのメダルはまだ無いのだ。レースの賞金だけで3000万円ほど稼ぎ、それで生計を立てているホッスー選手がその実力をリオの舞台でも発揮し、複数のメダルを獲得出来るだろうか。

 

 アメリカのレデッキー選手からも目が離せない。自由形3種目の世界記録保持者は200M 400M 800Mの自由形に出場する。女子48年ぶりの自由形三冠に輝くのか、自身の世界記録の更新はなるのか、見どころが満載だ。

 

 日本の選手も、昨年の世界選手権の200Mバタフライで優勝した星選手の活躍に期待だ。また、女子選手は高校生以下の選手が5人出場する。高校生ながら4種目で日本記録を持つ池江選手をはじめとした若い世代の台頭にも注目したい。

 

東京大学運動会水泳部競泳陣
鈴木智也

 

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