フェンシングは、第1回アテネオリンピックから正式種目として採用されている歴史のある競技です。リオオリンピックでは8月6日(土)から14日(日)まで開催されます。剣の形、攻撃する場所、ルールなどが異なる3つの種目(フルーレ、エペ、サーブル)があります。今回は、種目ごとの注目ポイントと日本代表選手をご紹介します。
・フルーレ
フルーレの有効面は頭部と四肢を除いた胴体の両面です。選手は有効面がわかるように金属製のメタルジャケットを着用します。
フルーレの最大の特徴は「攻撃権」です。同時突きの場合には、この権利を持っている選手が有効面を突いたときのみ得点することができます。「攻撃権」は先に腕を伸ばし剣先を相手に向けた選手に生じます。相手は、剣を叩いてその剣先をそらしたり、攻撃から間合いを切って逃げ切ったりすると「攻撃権」を奪い返し反撃することができます。瞬時の技や剣のやりとりで1秒間に2~3回権利の持ち主が変わることもあります。フレーレでは「攻撃権」の行方が注目ポイントです。
日本でもっともメジャーな種目であり、2008年の北京オリンピックと2012年のロンドンオリンピックで銀メダルを獲得した種目もフルーレです。今回は、太田雄貴選手(森永製菓)、西岡詩穂選手(ネクサス)が出場します。
太田選手は、剣のしなりを活かして相手の背中を突く「振り込み」という技の精度や剣さばきが世界トップクラスで昨年の世界選手権も制しています。前回銀メダルを獲得した団体は惜しくも出場権を逃しまいましたが、世界ランキング2位の太田選手が日本人初の金メダルを目指します。
・エペ
中世の決闘をモデルにしているエペは全身が有効面です。剣を持っている手や、つま先を突いても得点になります。また、フルーレのような「攻撃権」がなく、ランプが点灯すると必ず得点になり、同時突きの場合は両者に得点が入るなど、見ていてとてもわかりやすい種目です。一見得点するのが簡単に思えますが、それは相手も同じなので、一瞬のスキが失点につながってしまいます。選手は、間合いを保ちながらチャンスをうかがうためエペの試合は極端に慎重なものになる傾向があるものの、どちらかが間合いを詰めて攻撃を仕掛けると試合が一気に動き始め、激しい剣のやりとりが行われます。この変化に富んだ試合展開がエペの注目ポイントです。
ヨーロッパでは人気のある種目で過去のオリンピックでも欧米勢、特にフランス、イタリアの強さが特に目立っています。日本からは、見延和靖選手(ネクサス)、佐藤希望(大垣共立銀行)が出場します。見延選手は、昨年秋のワールドカップで同種目日本人史上初の優勝をしています。独特なフットワークから作り出す間合いと突きの正確性を武器に日本人初のメダル獲得とアジア人初の金メダル獲得を目指します。
・サーブル
サーブルの有効面は両腕、頭部を含む上半身の全てでフルーレと同じようにメタルジャケットを着用します。騎上での戦闘を起源とする種目で、フルーレとエペが突きだけの競技であるのに対し、相手の有効面に触れることで攻撃になる「斬り」の動作があるのが大きな特徴です。また、フルーレと同様に「攻撃権」があり、フットワークでの駆け引きによって攻撃と守備がめまぐるしく変わっていくため、「スピードのサーブル」と言われています。
他の2種目を遙かに上回るダイナミックさとスピードが注目ポイントです。
サーブルは伝統的にハンガリーが強く、最多の金メダルを獲得しています。アジアでは韓国が2012年のロンドンオリンピックでは男子団体で金メダルを獲得するなど力をつけています。
日本からは、徳南堅太選手(デロイトトーマツコンサルティング)、青木千佳選手(ネクサス)が出場します。これまでの大会での成績を見ると、他の2種目に比べてメダル獲得の可能性は低いですが、若手世代の育成も進んでおり今後の日本勢の躍進が期待されています。
この他にも近代五種ではエペの競技が行われ、パラリンピックでは車いすの上でオリンピックと同じルールで競技をする車いすフェンシングが開催されます。
ぜひ今回のオリンピックでフェンシングの魅力を感じてみてください!
東京大学運動会フェンシング部
齋藤磨生
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