学術

2021年8月16日

【寄稿】70年前の東大生の歩みが分かる 教養学部創立初期のクラス会誌が駒場図書館へ

 

 今年7月、教養学部駒場図書館に、ある一冊の本が寄贈された。今からちょうど70年前の1951(昭和26)年度に東大に入学した、理Ⅱ7Bというクラスの会誌を合冊したものだ。1949(昭和24)年に創立された教養学部の初期の学生について知る上で、貴重な資料となっている。寄贈の趣旨について、クラスの代表である髙橋正郎さんと司馬正次さんに寄稿してもらった。

(寄稿=髙橋正郎、司馬正次)

 

 東大教養学部に、初めて旧制高校卒より新制高校卒が多く入学したのは昭和25(1950)年であった。その翌年に入学した私どもは今年で入学70周年になる。

 

 長く続いている私どもの駒場時代のクラス会は、それを記念して、去る7月、駒場図書館に、『若きYAHOOはその後』と題する759ページに及ぶ大著の書籍を寄贈した。同書は「東大駒場S26理Ⅱ7B同窓会誌」と副題にあるように私どものクラス会誌である。

 

 駒場図書館では、同書をその希少性・貴重性に鑑み、保存書庫に配架しながら、学生だけでなく一般利用者の閲覧に供してくれるという。

 

駒場図書館に寄贈された、クラス会誌の合冊版(写真は髙橋さん提供)

 

 昭和26(1951)年に入学し、配属されたクラスで、私どもはメンバー相互がバラバラであることに深く悩んだ。なんとか、心を通じ合い、クラスとしてのまとまりを固めようと、英語のテキスト『ガリバー旅行記』第4部の中から借用した『YAHOO』と題する「クラス会誌」を2回、発行した。

 

 そのクラス会誌は、その名前のユニークさ、戦後間もない時代の先生、生徒の関係、駒場の建物とも重なり、その後私どものクラスの共通の想い出の一つとなった。

 

 事実、大学を卒業して50年後、会員が定年になった折に開催されたクラス会の席で、「同窓会誌」の発刊が提起され、『若きYAHOOはその後』と題する「再刊YAHOO」第1号を平成17(2005)年に発行した。

 

 そしてその後、ほぼ2年ごとに号を重ね、本年4月のその第10号の発行をもって完結させた。

 

 記録にないので、定かでないが、数多ある東大教養学部のクラスで「クラス会誌」を在籍時代に発行したクラスはいくつあったか、さほど多くはなかったことと思う。

 

 しかも、それが70年もかけて、創刊・再刊合せて12号にもなるというクラスは、おそらく他に例がないのではなかろうか。

 

 何がそれを可能としたか? クラス会誌刊行のため労をいとわぬ編集幹事がいたことはもちろんである。

 

 しかし、創刊1・2号には26本の記事、再刊1~10号には124本、合わせて150本の記事が生まれるには、クラスメンバーの強いつながり意識があったためと思っている。

 

 その内容は「不真面目医学生フランス留学記」をはじめとする留学記、「ネパール旅行」や定年後イギリスに長期滞在した「パブを通してみるYahooの国」などの旅行記、専門を生かした「のどぼとけの話」や「動的風土論」などの随想、さらには「BSE調査検討委員会を振り返って」といった本業と別の社会活動で体験したことの裏話など、多彩である。

 

 質・量ともに『學士會会報』(編集部注:旧帝国大学に当たる国立七大学の合同同窓団体である、学士会の会報)を超すとも劣らない内容のものではなかろうかと自画自賛している。

 

 これを見て、今、私どもが感じるのは駒場の2年間の貴重さである。もし、早くから専門領域別のクラスとなっていたらこれだけ幅広く、質の高い内容とはならなかったであろう。

 

 コロナの中、この2年間の駒場での学生生活はどうなっているのだろうか。友とのつながりに悩む諸君、またこれからの駒場生諸君、米寿を過ぎた先輩たちのクラスのつながりをつくる努力、また駒場の2年間の貴重さをこの本の中から知っていただきたい。それがこれから社会で活躍する諸君の参考になることを切に願っている。

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