アメリカの主導で行われたアフガニスタンでの「対テロ戦争」において、最も戦闘が激しかったと言われているコレンガル渓谷。そこで任務につくアメリカ軍の小隊に1年間従軍して撮影された映画『レストレポ前哨基地(vol.1 & vol.2)』が11月28日より公開される。
戦争の様子を米軍の兵士の目線から描いたこの映画は、アフガニスタンの戦場で兵士たちがどのように日々を過ごし、友情を育み、戦闘に向い、現地の住民とコミュニケーションをとるのか、克明に表現している。
ジャーナリストとして従軍した2名の監督は、長い期間を兵士と過ごし戦闘に参加することで、彼らに受け入れられ、この映画を通してアメリカ兵のリアルな表情や戦争との関わり方を伝えている。
戦争ドキュメンタリーとしては非常に水準の高い映画ではあるが、アメリカ兵からの視点に終止している点には違和感が残った。空爆を含む戦闘によって民間人に多くの犠牲がでていることや、アフガニスタンでの戦争が起こったそもそもの理由、誰が利益を得たのか、復興はどうして難しいのか、という視点は少ない。
映画の中には、密着する部隊が行った作戦によって5名の民間人が犠牲になるシーンがある。そこでは亡くなった人々や、それに対して米兵がどう対処するかについては描かれない。犠牲者の家族や友人は、とつぜん現れた異邦人に大切な人を奪われたことをどう感じるだろうか。
このように視点が米兵側に固定されているという限界はあるものの、1年にもわたって1つの小隊に密着し、兵士たちが仲間の死に動揺する様子や、戦闘がない期間を退屈そうに過ごす様子、戦闘による興奮にはまっていく様子を描くこの映画は、他のどの映画にもない彼ら自身の戦場での「リアル」を写している。
「日本がテロにあったらどうするか?」
11月26日に渋谷ユーロライブで行われた先行上映イベントには、小林よしのりさん(漫画家『ゴーマニズム宣言SPECIAL「戦争論」「新戦争論」』)や、加藤朗さん(自衛隊を活かす会/桜美林大学教授『13歳からのテロ問題』)、佐野伸寿さん(自衛官/映画監督『ウイグルから来た少年』)が参加し、『レストレポ前哨基地』の感想や、日本社会がテロにどう対応すべきか、自衛隊の役割や憲法9条を改正すべきかどうかなどのテーマが話された。
トークショーでは、11月13日にフランスで起きたテロについても触れられた。ファシリテーターの浅井隆さん(アップリンク社長)が、自身のツイッターでのアンケートについて紹介し、
日本がISに攻撃され多くの死傷者が出た場合どうするかという質問に対して、24%が「話し合えないので攻撃を行うか協力する」、76%が「暴力の連鎖は良くない、攻撃はしない」と答えた
(浅井隆さんのツイッターより)
と語った。
その結果を受けて、加藤朗さんは
ガンジー主義もいいと思うが、それを実行できるかきちんと考えることが必要で、実際にやられてもやり返さないことができるかと問いたい。
小林よしのりさんは、
ガンジー主義というのは「やられてもやり返さない、憎悪しないで非暴力の抵抗をする」というものですが、わしだったら家族が(ISに)殺されたら激昂しますよ。
日本でISのテロがあっても、自衛隊はフランス軍のようにラッカを空爆することはできない。では後方支援をするのか? フランスは空爆をした。復讐せざるを得なかったんです。空爆をしないと世論が収まらずオランド政権はもたなかったでしょう。
などと語った。
(文責 須田英太郎)
映画『レストレポ前哨基地』Part.1&Part.2は、11月28日より渋谷アップリンクにて上映される。