留学に行きたいと思いつつ、不安を抱いている人は多いだろう。そんなあなたにおすすめなのが、この企画「てるよしかねこのリアルタイム留学記」だ。2024年の秋から英国に1年間、現在進行形で留学をしている金子照由さん(24年3月東大工学部卒業)が、リアルな留学事情をお届けする。リアルタイムで留学に行っていることを生かし、本編とは別に読者から質問に答えるコーナーも設けた。過去の留学を振り返るのではない、フレッシュな記事をお楽しみいただきたい。(寄稿=金子照由、編集=安部道裕、写真は全て金子さん提供)
「国」を感じるイギリスでの人間関係
日本からおよそ9000km離れた地にいても、インターネットのおかげで日本の情報には触れられている。毎晩ベットに横たわってはダラダラと日本のニュースを見るのが日課になっている私である。最近の、と言っても先月の話だが、ホットな話題は衆院選があったことだろう。与党の自民党の議席数が過半数を割ったという報道があったが、実はイギリスも数カ月前に選挙があり、政権交代したばかりなのだ。ということで今週は、留学で感じた政治的なトピックを扱おうと思う。
イギリスに留学に来て最も衝撃だったのは、日本では滅多に感じることのなかった政治的対立や文化的対立を頻繁に目の当たりにすることだ。例えば、私のルームメイトの大学には地球儀のパブリックアートがあるのだが、香港や台湾が中国と同じ色で塗られている。それに怒った学生がその地球儀を壊そうとしたそうだ。今では警備員が地球儀に張り付いているという。
他の友人の話では、特定の国の人とルームメイトにならないよう寮にお願いする人もいるらしい。国と国の関係性が、人と人の関係性に影響を及ぼしているのだ。さまざまなバックグラウンドを持つ人が暮らすロンドンでは、そういうことがしばしば起こる。国というラベルが貼られることで、偏見や差別がつきまとう状況は少し悲しい。幸いなことに、日本が嫌われていると感じることは今のところ全くない。それを考えると日本の外交政治は機能しているのだなとは思う。
頻繁に行われるデモにも驚いた。毎週のようにガザやウクライナ問題に対する大規模なデモが行われ、何千人もの人が参加し、道を一杯に埋め尽くす。テムズ川を渡る橋は人で溢(あふ)れ返っており、車が通行止めになってしまうほどだ。そのため、デモの日は登校に使っているバスが橋を渡れず、その前で降ろされてしまう。橋を歩いていると人の波に飲まれそうになるが、ボードや旗を掲げて声をあげる姿には心打たれるものがある。
労働デモも盛んだ。先週は地下鉄の会社で労働デモがあり、ある時間帯は電車が動いていなかった。そのせいで出勤、登校ができない人がいたり、私も予定が変わりかけたりした。バスからデモの様子を見ることができたのだが、それに賛同するバスの乗客が車内から叫んでいた。デモへの本気度にはいつも驚かされる。
日本では見ることのなかったデモや政治的対立の状況を目の当たりにすることで、日本にいるときよりも政治について考えるようになった。社会との接点が多い建築学を学ぶ身として、みんなが幸せに生きられる国のあり方、国家間の関係とはどんなものなのか、思考を巡らせながら今日もデモを見ている。
質問コーナー
ここからは読者から寄せられた質問に答えるコーナーになります。今回はお休みです。
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