キャンパスライフ

2024年10月9日

英国で最初に学んだのはラテンのノリ!? 連載#2【てるよしかねこのリアルタイム留学記】

リアルタイム留学記のサムネイル

 

 留学に行きたいと思いつつ、不安を抱いている人は多いだろう。そんなあなたにおすすめなのが、この企画「てるよしかねこのリアルタイム留学記」だ。2024年の秋から英国に1年間、現在進行形で留学をしている金子照由さん(24年3月東大工学部卒業)が、リアルな留学事情をお届けする。

 

 リアルタイムで留学に行っていることを生かし、読者から質問に答えるコーナーも設けた。「留学先で住む場所はどうやって探したの?」といった金子さん自身への質問はもちろん「日本人留学生の印象ってどう?」といった質問も大歓迎。そういった質問には金子さんに「記者」となってもらい、留学先の誰かにインタビューして回答してもらう。過去の留学を振り返るのではない、フレッシュな記事をお楽しみいただきたい。(寄稿=金子照由、編集=安部道裕、写真は全て金子さん提供)

 

【連載第1回の記事はこちら】

テムズ川南岸「人種のるつぼ」で暮らしが始まる 連載#1【てるよしかねこのリアルタイム留学記】

 

留学先で最初に学んだのはラテンのノリ!?

 

 入居して1週間。イギリスでの生活にも慣れてきたころ、大学が始まった。英国の大学の始まり方は、日本とは大きく異なる。日本では学期の初日が入学式であることが一般的だろう。それに対し、イギリスでは入学式はなく、説明会や大学になじむための懇親会を行う「イントロダクションウィーク」が設けられている。今回は、私の留学先であるAAスクールのイントロダクションウィークについてお話ししよう。

 

 イントロダクションウィーク初日。集合場所の指定はなく、10時集合とだけ知らされていた。20分前に大学に着いたが扉は開いていない。不安を感じつつも、大学に面する広場で待つことにした。10分もすると、ちらほら人がやってきては同じように開かない扉に戸惑い、同じように広場に集まる。集合時間になると、内側から誰かが扉を開けたのか入ることができた。迷路のように入り組んだ廊下を進んで行くと、会場らしきところに。すぐに説明会が始まり、大学のウェブサイトの使い方や極めて複雑な校内を説明された。それが終わると、流れるように学生証の受け渡しやビザの登録が行われ「今日はこれで終わりよ」と告げられた。

 

 あまりにスピーディな説明会にあっけに取られていると、他の学生たちも同じような感情だったのか、大学内の広場にとどまっていた。広場といってもロの字型の建物が取り囲む中庭のベランダのことで、狭いところに人が所狭しと居座っている。よく見ると多くがインド系の学生だった。アジア系もいたが、日本人は1人もいないようだ。

 

広場として使われているベランダ。パーティなどもここで行われる
広場として使われているベランダ。パーティなどもここで行われる

 

 「さて、どうしようか」と思いながらぽつんと座っていると、隣のラテン系の学生が話しかけてくれた。ペルー出身だという彼はコースを聞いてきた。私が答えると彼も同じだと分かり、話が弾む。他の同じコースの学生も紹介してくれ、みんなで昼ごはんを食べに行った。仲良くなった友人のほとんどはラテン系もしくはインド系で、年齢は20代後半や30代だった。私が22歳だと話すと、皆に驚かれた。というのもヨーロッパの他の大学の建築学科の修士課程の多くは、1年間以上の就労を入学要件に求めている。それゆえ学部を卒業してすぐに修士課程に入学するのは珍しいのだ。

 

 その後の3日間はコースの説明や学内の資料室、図書室の見学をした。最終日にはロンドンツアーがあり、テムズ川クルーズ、ピクニック、そしてランドマーク巡りの3本立てだった。クルーズはロンドンの中心部から東のグリニッジまでの航行。ロンドンアイやビッグベン、ウェストミンスター寺院と言った名所を見ることができた。グリニッジに着くと天文台まで歩き、そこでピクニックをした。

 

テムズ川クルーズで見たシティ・ホール。英国出身の建築家、ノーマン・フォスターによる設計でロンドンを代表する建物の一つだ
テムズ川クルーズで見たシティ・ホール。英国出身の建築家、ノーマン・フォスターによる設計でロンドンを代表する建物の一つ

 

 印象深いのはテムズ川の両岸を結ぶゴールデン・ジュビリー橋だ。2002年に完成した歩行者用の橋で、エリザベス2世の即位50周年に因んでこの名前が付けられたという。複雑な構造を持つこの吊り橋は、兼六園の「雪吊り」を彷彿とさせる見た目で、少し日本を思い出した。グリニッジに着くと天文台まで歩き、そこでピクニックをした。

 

テムズ川から見るゴールデン・ジュビリー橋。吊り構造が特徴的だ

 

 クルーズやピクニックでは、ラテン系の学生たちと多く話した。お互いの国の文化について話し合ったが、とにかく彼らはアニメや漫画に詳しい。聞けば、テレビで日本のアニメを見て育ったとのことだ。その影響か、アニメで覚えたらしい日本語を言ってくれる。「準備できたか?」など、どこで覚えたんだと思うような言葉まで知っていて衝撃を受けた。

 

 ピクニックの次は、ランドマークツアーだ。しかしこれは単なるツアーでない。グループに分かれて、ロンドンの有名な建築の前で動画や写真を撮り、その出来を競うというものだ。私は例のラテン系の友達とまわることになった。

 

 一つ、二つ、三つと建物を訪れては動画を撮るのだが「建物の前でピースをする」といった動画ではない。毎回、踊っている動画を撮るのである。彼らはとにかく踊るのが好きなのだ。踊りのバリエーションも豊富で、コモンセンスなのか、中南米の異なる国の出身の人たちでも一緒に踊ることができる。私も教えてもらい、パーティでよく踊られているという「マヨネーズダンス」を踊った。

 

 一方の私は、阿波踊りを教えた。「これが日本の伝統的なダンスなんだね」と言って、みんな阿波踊りを楽しんでくれた。動画コンテストの結果は……惨敗だった。

 

ロンドンのランドマーク、BTタワーの前でのダンス
ロンドンのランドマーク、BTタワーの前でのダンス

 

 日本にはない、イントロダクションウィーク。それは大学を知るだけでなく、友人と互いの国の文化を共有し経験することを目的としている。日本とは違い多様な国籍や人種で構成されている英国だからこそ、異国の文化を知る機会が必要なのだろう。ランドマークツアーの終わり、一緒に回った友人の1人が「テルは僕たちラテングループの一員だよ」と言ってくれた。中南米のノリを覚えた私は、彼らの仲間になれたのだった。

 

質問コーナー

 

 ここからは読者から寄せられた質問に答えるコーナーになります。今回、寄せられた質問はこちら。

 

「住居はどれくらい前から、どのように探しましたか」

 

回答:渡英する3カ月前くらいから探し始めました。「The University of London Housing Services」という住居探しのウェブサイトと大学が提携していたので、そちらで探しました。公立大学だと学生寮を持っていることがほとんどなので住居に困らないと思いますが、AAスクールは私立大学で、大学の寮がなかったので、住居探しには苦労しました。

 

 住居によりますが学生寮でない場合は、ビザを取得していないと確約することが難しいことが多いです。私は留学の2カ月前にビザを取得したのですが、その時にはほとんどの住居が埋まってしまっていました。やっとのことで見つけたのが、今住んでいる部屋です。留学する際は、ビザの取得と住居探しを早めに始めることをおすすめします。

 

 

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