キャンパスライフ

2024年9月25日

テムズ川南岸「人種のるつぼ」で暮らしが始まる 連載#1【てるよしかねこのリアルタイム留学記】

 

 留学に行きたいと思いつつ、不安を抱いている人は多いだろう。そんなあなたにおすすめなのが、この企画「てるよしかねこのリアルタイム留学記」だ。2024年の秋から英国に1年間留学をする金子照由さん(24年3月東大工学部卒業)による連載で、現在進行形で留学に行っている金子さんがリアルな留学事情をお届けする。

 

 リアルタイムで留学に行っていることを生かし、読者から質問に答えるコーナーも設けた。「留学先で住む場所はどうやって探したの?」といった金子さん自身への質問はもちろん「日本人留学生の印象ってどう?」といった質問も大歓迎。そういった質問には金子さんに「記者」となってもらい、留学先の誰かにインタビューして回答してもらう。過去の留学を振り返るのではない、フレッシュな記事をお楽しみいただきたい。(寄稿=金子照由、編集・安部道裕、写真は全て金子さん提供)

 

テムズ川南岸「人種のるつぼ」での暮らしが始まる

 

 ロンドンの中心部に位置する広場ベッドフォードスクエア。広場と正対するようにして、世界で最も有名な博物館の一つ、大英博物館が鎮座している。教科書で何度も見た建物の前に立ち「ああ、ついに私もイギリスに来たのだ」と実感した。感動を噛み締めつつも、博物館に背を向ける。渡英した目的はその反対側にあるのだ。Architectural Association School of Architecture、通称AAスクール。世界的建築家ザハ・ハディドやレム・コールハースを輩出してきたことで有名な大学である。

 

 私は今年の春に東京大学を卒業し、秋からAAスクールの修士課程に入学する。日本とは異なり、イギリスの修士課程は通常1年間のプログラムである。冒頭に記してあるように、今回の連載はリアルタイムで留学に行っている私が、ロンドンでの留学事情をお伝えする企画である。一般的な体験記のような全体的な留学の話ではなく、隔週で新鮮な体験をお届けできるからこそ、細やかで具体的な内容にしたい。今回は連載第1回として、衣食住の最も基本となる「住」に焦点を当てた。

 

AAスクールの建物の外観。日本で言うところの長屋「タウンハウス」をリノベーションして、大学として使っている。街並みに溶け込んでいるため、初めて来た時は大学の建物がどれか分からなかった(写真は金子さん提供)
AAスクールの建物の外観。日本で言うところの長屋「タウンハウス」をリノベーションして、大学として使っている。街並みに溶け込んでいるため、初めて来た時は大学の建物がどれか分からなかった

 

 私は今、ロンドンの中心街からバスで30分ほどのペックハムという場所に部屋を借りて住んでいる。イギリスの賃貸住宅はフラット、スタジオの2種類に大別される。日本ではあまり聞きなれないが、前者はトイレやバス、キッチンが共用の住宅で、後者はそれらが各住戸に備わっている住宅である。私の部屋はフラットにあたり、家賃は月15万円ほど。ロンドンの一人暮らし用の賃貸住宅は、家賃が15万円から30万円ほどが一般的であるため、かなり安いほうだ。

 

 ロンドンは交通料金体系として、ドーナツ状にゾーン1から9までに分けられている。1が中心地で、9が最も外れの地域だ。私の住むペックハムはゾーン2のテムズ川南岸側にあるため、中心地に比べ居住費が安くなりやすい。それでも中心地へのアクセスはしやすい方なため、さまざまな人が暮らす地域となっている。「人種のるつぼ」と言えるくらい、この町では多様な人種が共存している。

 

アパートの外観。イギリスの建物はレンガの外観であることが多く、街並みの景観に歴史を感じられる
アパートの外観。イギリスの建物はレンガの外観であることが多く、街並みの景観に歴史を感じられる
フラットルームの自室。18平米ほどの大きさで、家具やベッドは備え付けであった
フラットルームの自室。18平米ほどの大きさで、家具やベッドは備え付けであった

 

 そうしたロンドンの多文化性は良い面が多いように感じる。たとえばスーパーマーケットだ。入居した最初の日に日用品や食料の買い出しのために近くのスーパーに出向いたのだが、さまざまな人が生活しているためか、品揃えが多岐に渡っていることに驚いた。お米はもちろん、醤油やオイスターソースなどもあり、食生活には困らない。いろいろな地域の食べ物を試せる点でも、食への関心が尽きなさそうである。物価はというと、日用品は日本と同等かやや安く、食料品が少し高い印象だ。

 

アパートの近くにある大規模なスーパーマーケット。日本食も豊富に取り揃(そろ)えられており、写真左側にはカップヌードルが並ぶ
アパートの近くにある大規模なスーパーマーケット。日本食も豊富に取り揃(そろ)えられており、写真左側にはカップヌードルが並ぶ

 

 食料や日用品の買い出しには、家のオーナーがついてきてくれた。家に戻ると「何か問題があったら、いつでも電話するんだ」と温かい言葉を残してオーナーは帰っていった。一人になった部屋で、ベッドに寝ころぶ。1日の疲労を感じつつ彼の優しさの余韻に耽(ふけ)る。イギリスでの生活の始まりを感じた最初の夜だった。

 

読者からの質問コーナー

 

 ここからは読者から寄せられた質問に答えるコーナーになります。今回は連載第1回なのでありませんが、毎記事で本編の後に設けられますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

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質問だけでなく、ご意見・ご感想も募っております。たくさんのご質問・ご感想をお待ちしております。

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