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2024年8月27日

【学費問題】学生アンケートに藤井総長が返答 「授業料を低くとどめるだけでは、多様性が実現できない」

 東大の藤井輝夫総長は8月23日、授業料改定に関する学生アンケートの結果を受け、メッセージを学生に公開した。改定がダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に反するとの意見に対して、増収による教育環境への投資が社会全体のD&I推進のためにも必要だと返答した。授業料の激変に伴う影響を懸念する声を踏まえ、新しい授業料の適用拡大を段階的にすることも検討していることが明かされた。検討過程で学生とうまくやりとりできず、混乱を招いたことについては反省と謝罪の意を表明した。

 

大学の財務状況

 

 大学財務に関する基本情報として、2004年の国立大学法人化以降、人件費抑制や事業縮小を行い不足経費を補填してきたことについて言及。学生の理解を求めた。特に人件費の抑制が、教職員1人当たりの業務量を増大させ、研究時間の減少を招いていると指摘。研究力が教育の質にも関わっているとした上で、現状を「まことに遺憾」だとした。財源の多様化を目指す中で、使途が自由で安定的な収入として授業料の引き上げも検討せざるを得なかったと説明した。

 

授業料改定の対象

 

 学部や研究科ごとに授業料を変えるべきだという学生からの意見には、否定的な見解を提示。教育の機会均等や総合大学としての一体性から慎重な検討を要するとした。激変への懸念を踏まえた対応として、改定後の授業料の適用対象を段階的な拡大を検討しているとし、大学院修士課程への配慮なども示唆した。留学生や社会人の授業料に傾斜を付けるという提案に対しては、根拠や具体的な仕組みを含めて検討すべきだとの意向を表明した。留学生の授業料については本年度の国立大学における留学生授業料の設定自由化を踏まえ、増減のいずれも視野に入れられるという。

 

増収分の用途

 

 増収分の用途の明示を求める意見には、年度ごとの執行計画に基づき予算が決められるとした上で「当面の教育環境改善の基本的な方向がわかるように例示」する意向を示した。図書館の開館時間延長など、施設運用に関する学生からの提案については、速やかに検討すると答えた。体験型プログラムについて受講生が個別に負担すべきという学生の意見もあったが、D&Iの観点から高質な教育プログラムにも少ない経済的負担で参加してほしいと返答した。

 

授業料改定による影響

 

 授業料改定に伴う受験機会への影響を懸念する意見には、仮定の議論の域を出ることができないと返答。授業料だけに大学選択を還元することはできないと指摘し、教育内容や研究水準の充実こそが東大の魅力を高めるとした。D&Iに逆行するとの学生からの意見に対しては「授業料を低くとどめるだけでは、大学内ですら多様性が実現できないことは明らか」だと述べた。社会のD&I向上のための教育に投資することも、国立大学としての責任だと説明した。世帯年収が600万〜900万円の学生への経済支援については、地方学生の生活費負担など個別の状況に応じた支援を行う予定だと明かした。

 

検討プロセス

 

 「対話」ではなく「交渉」を求める意見に対しては、労使関係の団体交渉は教育研究機関である大学を捉えるのに不適切だという見解を示した。併せて現在の学生の「声の大きさや数の多さのみで決めるわけにはいかない」と説明。在学生の意見の尊重は当然だとしつつも「未来の学生に望ましい環境を提供する必要もある」と説き、世界情勢や社会の動向を踏まえ決定していく必要性を強調した。

 

 最後に藤井総長は、学生とのやり取りがうまくできず、大きな混乱を招いたとして「真摯に反省し、お詫びしたい」とコメント。学生に関わる事柄について共に考える仕組みを丁寧に構築していきたいとして、学生に協力を呼び掛かけた。

 

 東大は6月21日の「総長対話」後の24日〜7月1日にアンケートを実施。学生1058人(うち学部生は47.1%)が回答した。「総長対話」や授業料改定、学修環境などについて主に記述式で問われた。藤井総長は当初から学生の意見を取り入れる意向があったとし、現在検討中の案は「総長対話」やアンケートでの意見を反映したものだと説明した。

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