東大は6日、学業や課外活動、社会活動などで特に顕著な業績を挙げた東大生を顕彰する「東京大学総長賞」の2019年度受賞者として、11人と1団体を発表した(表)。在学中の実績が特に顕著だと認められた場合に与えられる総長大賞には「課外活動、社会活動等」分野から角野隼斗さん(情報理工・修士2年=当時)が選ばれた。「学業」分野の総長大賞には、河野遥希さん(経・4年=当時)が選出されている。
「課外活動、社会活動等」分野には20件の推薦があり、総長大賞含め3人と1団体が受賞した。角野さんは18年に日本最大級のピアノコンクール「第42回ピティナ・ピアノコンペティション」で、年齢制限なしの最上級カテゴリー「特級ファイナル」の特級グランプリに。19年には第10回リヨン国際ピアノコンクールで第3位(2位はなし)入賞を果たした。フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)で機械学習を用いた自動採譜の研究に従事した経験も持つ。
他、ウガンダでエボラ出血熱への対策に従事した小杉穂高さん(医学系・博士2年=当時)や、NPO活動と医学教育の橋渡しに取り組んだ香川由美さん(医学系・博士4年=当時)が受賞した。本年創刊100周年を迎える東京大学新聞の編集部(編集長・中井健太=文Ⅰ・2年=当時)も選ばれた。
「学業」分野には29件の推薦があり、総長大賞含め8件が受賞した。河野さんは卒業論文で、政策委員会が金融政策を決定し、委員が個別に希望のインフレ率に関する個人情報を得たという仮定の下、金融政策ゲームを展開。中央銀行は、委員間での意見の異なり具合に関する情報を公開する必要があることや、民間部門に信用し得るメッセージを伝えられないことを明らかにした。
その他、木村謙介さん(新領域・博士3年=当時)は有機ELの新しい発光機構を発見し、成果が『ネイチャー』に掲載された。前田健人さん(工学系・修士2年=当時)はセキュリティーの問題を解決した上で特殊技術を使わずに、量子暗号の到達距離を従来の約2倍に伸ばせることを初めて証明し、成果が『ネイチャー・コミュニケーションズ』で取り上げられた。
この記事は2020年3月24日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
ニュース:新型コロナ影響各所で 入学式中止に
ニュース:感染阻止へ薬剤候補同定
ニュース:21年度推薦入試 1校当たりの推薦可能人数を拡大
ニュース:学生自治会 駒場東大前駅の安全確保要望へ
ニュース:19年度卓越研究員 公募型で8人を選出
ニュース:19年度総長賞 ピアニスト・角野さんと経・河野さんが大賞に
ニュース:東大発の2論文が米誌『PNAS』掲載
ニュース:将棋 東大生プロ棋士16年ぶり誕生
企画:退職教員最後のメッセージ(前編) 石川正俊教授(情報理工学系研究科)、月本雅幸教授(人文社会系研究科)、中里実教授(法学政治学研究科)
企画:桜とは一味違う伝統に触れて 社会文化史から再考する梅の魅力
世界というキャンパスで:分部麻里(文・4年)⑨
ひとこまの世界:松濤美術館
キャンパスのひと:久保田成歩さん(養・3年)
※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。