―先生は今、どのような研究をしていらっしゃるのですか?
内山 日本の政治において、専門性が政策決定の過程でどのように活かされているのか、という分野に関心を持っています。 例えば最近、経済財政諮問会議に経済学者が参加するなど専門家の役割が増えてきていますが、こういった傾向は比較的新しいことなのです。政策形成過程で、専門家の役割が、なぜ、どのように変化してきたのか、ということですね。
もう一つ、イギリスに滞在して研究していた経験もあるので、日本とイギリスの政治の比較も専門です。イギリスと日本の政治の仕組みは、議院内閣制という点で基本的には共通していますが、意思決定の構造は従来、大きく異なっていました。 どういうことかというと、小泉政権以前の日本の政治は、ボトムアップ的な意思決定が多かった。 それに対し、イギリスの政治は大まかに言えばトップダウン的で、大臣がリーダーシップを発揮します。
民主党政権のときは日本でも、「政治主導」としてイギリス型を取り入れようとしていましたね。そういった意思決定の構造変化について、比較を通じ、研究しています。
―前職は、通商産業省にいらっしゃいましたね。
ええ。1990年に入省して、2年ほど働きました。日米貿易摩擦や、それを受けての日米構造協議などがあった頃です。
―新卒で官僚というキャリアを選んだ理由は?
もともと経済政策に興味があったのです。学生の時は、研究者になるか、官僚になるか、少し悩みました。 でも当時は、実際に政策に携わる仕事の方がおもしろそうに思えたのです。いずれにせよ、公益に携わる仕事がしたいという思いありました。
―大学での勉強も、政策に関することが中心だったのでしたか?
そうですね。佐々木毅先生のゼミに属していました。
―サークル活動などはされていましたか?
落研に入っていました(笑)。 最近はコントなども多いようですが、当時はみんな落語をやっていて、プロの落語家さんに稽古をつけて貰ったりすることもありましたね。かなり入り浸っていまして、……というと、今の教員の立場では言いにくい話になってしまうかな(笑)。 何はともあれ、そこでの友人とは、今も仲が良いのです。
―今の学生へメッセージはありますか?
月並みな言い方かもしれませんが、学生の間は、色々な経験をしてほしいと思います。 社会人になってからも、色々な経験をする機会はあるでしょうけれど、大人になればなるほど、自分の交友関係が同質化していってしまう傾向はあると思います。 学生時代は自由ですから、自分と同じような人達だけとつきあうのではなく、異質なものも受け入れてみてほしいですね。 自由な環境で、自由な思考ができる、そんな環境を十分に活かしてほしいと思います。
―キャリア選択についてはどうでしょう?
難しいですねぇ。流行に乗るな!ということでしょうか。 今はこの業界がハヤリ、というようなこともあるでしょうけれど、そういったことは10年も経てば大きく変わるものです。 「みんなが行くから行く」などのように流されるのではなく、自分は何がやりたいか、しっかりビジョンを持って仕事を探してほしいですね。
―先生は、一度転職されていますが、転職についてはどのようにお考えでしょうか?
私が役所を辞めたときは、周囲から「そんなのもったいない!」とたくさん言われました。昔は転職する人がレアでしたから。 最近は2,3年で、一度入った会社を辞めてしまう人も多いようですね。 その転職については、二つの見方があると思います。 一つは、「辛抱が足らん!」という見方。もう一つは、2,3年で自分の特性を把握した上でより適したところに行くのだから良いではないか、という見方です。それらはどちらも事実だと思います。 ですから、入ってみた環境で、一定の辛抱は必要だと思うのですが、その上で自分がさらにやりたいことが見つかったならば、転職という選択肢も良いと思いますよ。
―ありがとうございました!
内山融教授 東京大学大学院総合文化研究科教授 1966年生まれ。1990年東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)、東京大学法学部助手、東京都立大学法学部助教授などを経て現職。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など。編著に『専門性の政治学』(ミネルヴァ書房)。 文:菅野千尋
公益財団法人東京大学新聞社は、2014年5月に開かれる五月祭で、 「東大生よ、政治家を目指せ!?!?!?」というイベントを開催します。 今回インタビューにお答え頂いた内山教授の他にも豪華ゲストをお招きし、 日本の政治家について熱く語ります! 日時:5月18日 14時半頃〜17時過ぎまで 場所:本郷キャンパス 法文1号館21教室 事前申し込みは不要!皆さんのご来場をお待ちしております! イベント詳細はこちら(「参加」ボタンを押してください!) (詳細な日時は今後、若干変更される可能性もございます。随時ご確認ください。)