東大2次試験前期日程2日目が終わった夜、都内のビルのワンフロアで、今年の東大入試を解こうとする者たちがいた。彼らは、全員東大生と京大生。『ニコニコ動画』が主催する「東大・京大2次試験解いてみた 東大生vs京大生」に潜入し、その熱戦の裏側を探った。
2月26日、新宿Z会ビルの6階に、現役の東大生と京大生が集められた。これから始まる「東大・京大2次試験解いてみた 東大生vs京大生」に出演するためだ。1日目に、それぞれの数学・国語を、2日目に、英語・世界史・物理を解き、その場で採点される。合計得点が高いチームの勝利となる、いわば「東大vs京大」の対抗戦だ。
18時30分頃、控えの教室で全体説明が一通り終わると、ひとりの参加者が口を開いた。
「数学の解答用紙は、裏面も使っていいんですか?」
白衣を身にまとった彼は、鋭い口調で主催者に訪ねた。彼の名前はルシファー(lucifer)。東京大学理科三類の2年生で、「東大理系数学」を解く東大側代表だ。早くも対戦相手にプレッシャーをかける。その口調、また風貌からは、自分への、そして勝利への強い自信が見て取れる。
対戦直前のルシファーさんに、勝負への意気込みを聞いてみた。勝つ自信に満ちあふれ、勝利宣言も飛び出すかと思ったが、ルシファーさんの口からは、極めて冷静な言葉が出てきた。
「勝負というのは、水物です。勝つときもあれば負けるときもある。正直、どうなるかなんて、やってみないとわかりません」
至極、正論である。だが、ルシファーさんはこうも続けた。
「luciferのlは、lionのlでもあります。つまり、獅子です。獅子は、仮に相手がうさぎであったとしても、常に全力で戦います」
なんと頼もしい言葉であろうか。同じ東大生として、これほど心強い代表はいないと言ってもいいかもしれない。
一方、そのルシファーさんの対戦相手、京都大学総合人間学部1年生の西山さんにも、対戦への抱負を聞いた。
「正直、勝てる気がしません。なぜ、僕の相手がルシファーさんになってしまったのか……」
やはり、相手があのルシファーさんだけあって、動揺は隠せない。
「とはいえ、僕も京大代表です。ましてや、入試を受けたのは昨年。負けないよう、全力を尽くします」
2人とも、勝利への思いは変わらないようだ。
19時、いよいよ対戦部屋に2人が移動する。お互い、改めて簡単に自己紹介し着席すると、いよいよ試験開始のブザーが鳴り響いた。 試験が始まると、とてつもない勢いで鉛筆を走らせるルシファーさん。一方、冷静に、それでいて着実に問題を進めていく西山さん。 その真剣さに、部屋の空気はどんどんと重くなっていく。
21時40分、試験終了のブザーが鳴った。2人の表情は、150分間の戦いを終え、満足感と疲労感が混ざった様子にみえる。 すぐに解答用紙が回収され、採点が始まった。 その間、ルシファーさんと西山さんに、司会者から次々と質問が投げかけられる。
ずっと理三しか考えていなかったというルシファーさんは、1日に8〜10時間ほど勉強していたと告白。一時期、夜型の時間で取り組んでいたが、朝方に変えたところ成績が上昇したそうだ。
対して、西山さんは、もともと神奈川に住んでいたが、一人暮らしにあこがれ京大を受験したとのこと。1日の勉強時間は、学校以外で4〜5時間ほどという。 他にも、数学が苦手な人へのアドバイス、そして彼女の有無などプライベートにまで話題が及んだ。
22時過ぎ、採点が終わったことが運営側から通知される。 いよいよ、採点結果発表。それまでなごやかだったムードが、一瞬にして緊張感に包まれる。 その結果は…
ということで、ルシファーさんが勝利! 119点という驚異的な得点をたたき出したルシファーさんが、見事東大側へ勝利をもたらした。
しかし、恐るべきスコアをたたき出したルシファーさんだが、どこか納得のいかない様子……。どうやら、1点減点されたことが気になっているようだ。 減点の理由を解説してもらうと、ほんのわずかなロジックのミスと指摘される。理由を聞いても、どこか納得のいかなそうなルシファーさん……。
ともあれ、「東大理系数学」は、見事東大側が勝利をおさめた。 今年の理系数学は「易化」したとの講評が多いが、それでもルシファーさんの119点、また西山さんの106点ともに、すさまじい点数であることを指摘しておきたい。年度によって難易度に差があるとはいえ、東大理科一・二類であれば6割ほど(およそ70点)、理科三類でも7〜8割ほど(およそ90点)が合格ラインと言われている。 そのラインを軽々と超えていることを鑑みれば、2人の戦いがいかにハイレベルなものであったか、理解していただけると思う。
東大VS京大、この勝負の結末はどうなったのか。
また、ルシファーさんはブログもやっている。ルシファーさんの素顔に迫りたい方は、こちらも要チェック。