本郷キャンパスの東京大学大講堂(安田講堂)周辺で6月21日夜、複数人の警察官が確認された。東大は翌日、施設内に学生らが侵入して警備員が負傷、警察への通報を行ったとする声明をウェブサイト上で公開した。東大本部広報課は25日、学生らが安田講堂の正面玄関以外の入り口から侵入し、警備員1人が全治1週間の打撲を負ったと聞いている旨を明かした。東京大学新聞社の取材に答え、同日に大学ウェブサイト上の情報も更新した。
警察官は21日、警備員が「殴られた」という通報を受けて入構。午後11時ごろに安田講堂周辺に到着したとみられる。当時、安田講堂前には授業料引き上げに反対する学生らが集まっていた。ある学生は、同日午後9時ごろまでオンライン上で行われていた「総長対話」後に、大学の執行役員が安田講堂内にいるという情報を得たため建物前で待ち構えて抗議運動をしていたと話す。運動に参加した学生らは警察官の到着後、散会したという。抗議運動への参加の有無や運動に関わっている人物の名前などを聞かれたと話す学生もいる。
東大は翌日「本学施設への侵入事案について」と題する声明を公表した。安田講堂内に学生を含む複数人が侵入し、制止しようとした警備員が負傷したと発表。警察への通報を行ったとし、事態を「大変遺憾」だと述べた。22日には東大の学務システム「UTAS」上で学生向けに同様の説明を掲載した。東京大学新聞社が25日に東大から得た回答によると、安田講堂の正面玄関以外の入り口から学生らが侵入したことは確認しているが「人数や学生以外が含まれているかは事実確認中」だという。安田講堂は、シンポジウムなどの来場者以外入館できないルールが定められており、25日の東大の声明では「安田講堂は、常時入館者を管理しており、夜分に許可を得ずに侵入するような行為は認められません」としている。
一部の学生などからは、大学が警察を入構させたことに疑念の声が上がっている。東京大学教養学部学生自治会(自治会)は抗議声明を23日に発出した。今回の「警察力導入」が警備員が対処可能な範囲に収まる不必要な導入だと主張し、大学の自治を脅かすとして「最も強い言葉で非難」するとした。警備員の負傷の経緯についてインターネット上で情報が錯綜(さくそう)する中、東大は24日にUTASの掲示で「SNSや報道等の情報に惑わされることなく、冷静な対応をお願いいたします」と述べている。25日に発表した声明では「『大学が学生を排除するために警察を導入した』等の内容は誤った情報です」と明言した。
1969年に当時の学生組織と大学当局は、自治に関する確認書(東大確認書)を結んでいる。東大確認書では、大学当局が「学内『紛争』解決の手段として」警察力を導入しない原則が確認されており、自治会の声明はこの内容を踏まえた。