泉奈津子助教(定量生命科学研究所)らは、生殖細胞のゲノムを守る小さなRNA「piRNA」の前駆体が、RNA切断因子「Zucchini(ズッキーニ)」の働きで産生される過程を試験管内で正確に再現することに成功した。さらに詳しい解析により、Zucchiniの塩基配列上の切断ルールを解明。成果は1月29日付の英科学誌『ネイチャー』に掲載された。
piRNAは、遺伝情報を破壊する可能性のある特定の塩基配列を抑え込むなど、さまざまな生命現象に関わっている。長いRNAが因子Zucchiniなどの切断反応を受けることでpiRNAは産生されると考えられており、これまで生物情報学的なデータ解析から切断に特定のルールがあることが示唆されていた。一方、試験管内での切断反応ではルールが確認されず、確証が得られていなかった。
研究では、piRNA前駆体を速やかに成熟型piRNAに変える因子「Trimmer」に注目。Trimmerを欠損させることで成熟型piRNAに変わるのを防ぎ、piRNA前駆体を検出できる細胞を作った。この細胞を実験に用いることで生化学的・生物情報学的アプローチの両面からpiRNA前駆体を解析した。
まず、生体内でZucchiniがミトコンドリアの膜上に局在することに着目。試験管内でも同じ状態を作り出し、piRNA前駆体の産生の忠実な再現に成功した。続いて次世代シークエンサーを使うことによって、Zucchiniにより切断されやすい塩基配列を大規模に取得し、切断のルールを抽出。最後に、得られたルールを試験管内で検証した結果、予測された通りの位置に切断され、切断ルールが立証された。
この記事は2020年2月11日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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