駒場Ⅰキャンパスの学生会館の一室の扉を開けるとモールス信号の音が聞こえ、棚に並んだ無線機が目に飛び込んでくる。訪れたのは、東京大学アマチュア無線クラブだ。
アマチュア無線は、金銭上の利益のためではなく個人の趣味として行う無線通信。電波を通して、国内だけでなく海外の人とも通信できる。
アマチュア無線の交信には、主にアルファベットなどを長さの異なる符号で表したモールス信号を使う場合と音声で直接交信する場合の2通りがある。代表の佐渡友康さん(工・3年)は「モールス信号は使いこなせるようになるのが大変ですが、慣れると音声よりも遠くまで届き、疲れにくいのが利点です」と話す。アマチュア無線クラブではモールス信号による交信と音声による交信の両方をしている。
「電波はかけがえのない財産」(佐渡さん)であり、不当に利用することを禁じるため、無線の操作には「アマチュア無線技士」の資格が必要。アマチュア無線クラブの機器を十分に活用するには第1級の免許を取得しなければならない。新入生は例年未経験者が多いが、大半が2年生になるまでに第1級の免許を取得する。多くの大会で上位に入賞したり、過去には総長賞を授与されたりしたこともある強豪だ。
記者が訪れたのはコンテスト当日。コンテストでは決められた時間の中で交信した局数が競われる。交信の内容は自分の局のコールサイン(局ごとに割り当てられた識別番号)や信号の聞こえ具合など。多くの局と交信するには、電波を飛ばすアンテナの向きを工夫するなどの戦略を立てる必要がある。
今回は部室から大会に参加したが、夏に行われる全国大会では山にキャンプに行って標高の高い所から電波を飛ばす。佐渡さんは「高い所、見晴らしの良い所のほうが遠くまで電波が届きます」と説明する。交信を夜通しで続けるため、体力や精神力も必要だ。
サークルの活動は無線通信だけではなく、アマチュア無線で使用する周辺機器などの電子工作も手掛ける。さらに毎週水曜日には部員が集まってプログラミングなどの技術の習得に励み「コンテストの得点を集計するためのアプリの開発を目標にしています」と意欲を見せる。
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アマチュア無線の楽しみ方はいくつもある。見知らぬ海外の人とのコミュニケーションを楽しむ人もいれば、電波を飛ばすために山に登る過程をハイキングのように楽しむ人もいる。
しかし最も重要な点は「通信の全てを自分で準備する点」だと佐渡さんは話す。例えば携帯電話は通信会社が引いた回線を利用しているに過ぎない。「技術さえあれば全てを自作の機器で賄うこともできます」。学生会館の小さな一室で「生の交信」の世界を体験した。
この記事は、2017年5月23日号に掲載した記事を再編集したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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