東大は11月25日、学内の知的財産の管理・活用状況をまとめた『東京大学 知的財産報告書2022』の発行を発表した。『知的財産報告書』の発行は今年が初めて。国内の他大学に先駆けて知的財産活動の包括的な可視化に取り組み、活動の質向上と研究成果の社会実装のさらなる推進を図る。
知的財産権による研究成果の保護の目的は、民間企業による研究成果の事業化などで得られた利益を研究者自身や大学へ還元すること。得た収入を大学各部局の運営に投じることで、新たな研究成果へつなげることが狙い。研究成果の適切な管理は民間企業側の投資を促進することも期待される。成果を社会に還元するという大学の使命を果たす上で知的財産活動は重要だ。報告書では、優れた研究成果を特許権などの知的財産権で保護することの意義や、成果の民間企業での利用状況について事例を交えつつ説明。発明の届出、特許の出願や活用状況の推移を示した他、研究活動で作成されたソフトウェアやデータベースの著作権の承継とその活用状況についてもまとめている。知的財産活動から得られた収入の推移とその背景の分析もある。
昨年6月の企業統治指針の改訂で、上場企業に対して知的財産への投資について具体的な情報開示が義務化されたことを背景に、「UTokyo Compass」では学内の知的財産の開示方法を検討するとしていた。
【解説】UTokyo Compass
昨年9月に東大が公表した行動指針。「対話から創造へ」「多様性と包摂性」「世界の誰もが来たくなる大学」の三つが基本理念。学内だけでなく、学外も含めた多様な人や組織と共に対話を通じて未来を作るとする。「経営力の確立」も目指す。
具体的な行動計画は、①新しい大学モデル ②GX(グリーントランスフォーメーション) ③DX(デジタルトランスフォーメーション) ④D&I(ダイバーシティ&インクルージョン) ⑤教育 ⑥研究 ⑦社会との協創の七つの観点から示されている。
10月31日には藤井輝夫総長が「1年経過成果報告」を公表。特にD&IやGXの進展を強調するとともに、成果の発信を続けていくとした。各活動の達成度を示すモニタリング指標の推移も公表している。