自炊をする学生にとって、パスタは定番料理といっていいだろう。市販品のパスタソースを利用すれば、麺をゆででソースと合わせるだけで簡単においしいパスタが出来上がる。しかし、時には自分でソースから作ってみるのはいかがだろうか。具材などを好みにカスタマイズできるのも自炊の醍醐味(だいごみ)だ。東大卒の食文化研究家スギアカツキさんに、自炊にぴったりなパスタのレシピの提供を受けた。
鶏ときのこのアンチョビクリームパスタ
人が作ってくれた食事をありがたく食べることは尊いことですが、自分でおいしい料理を作ることができるようになれば、より主体的な人生を歩むことができます。これは東大を卒業して20年たった今だからこそ断言できること。
今回ご紹介したいのが、身近な麺料理のひとつであるパスタ料理です。私は食リサーチのために世界中を旅していますが、以前ベネチアで食べたアンチョビクリームスパゲティのあまりのおいしさに感動し、自分で作るようになりました。本場の味を目指しながら、日本のエッセンスをちょっぴり加えることで自分だけの味になり、喜びが加わります。
アンチョビペーストを使ったうまみたっぷりのクリームパスタ。市販のソースとは次元の違う風味が味わえますから、春休みや休日を使って楽しみながらチャレンジしてみてくださいね。
材料(1人分)
スパゲティ(乾) | 100g |
鶏もも肉 | 100g |
きのこ(しめじ、まいたけなど) | ひとつかみ |
にんにく | 1片 |
オリーブオイル | 大さじ1 |
生クリーム(33%程度) | 100ml |
アンチョビペースト | 小さじ1 |
めんつゆ(濃縮) | 大さじ1 |
料理酒(あれば) | 大さじ1 |
コショウ | 適宜 |
塩(スパゲッティをゆでる用) | 適宜 |
作り方
(1)にんにくを細かく刻む。きのこは食べやすく切り分け、鶏もも肉は小口切りにして、麺つゆと料理酒に漬けておく。
(2)パスタをゆで始める。フライパンににんにくとアンチョビペーストとオリーブオイルを入れて火にかけ、香りが出てきたら鶏肉ときのこを漬け汁ごと入れて炒める。鶏肉に火が通ったら生クリームを加えて全体が温まったら火を止める。
(3)ゆで上がったパスタをフライパンに移して、火をつけて全体を混ぜ合わせる。皿に盛り付けて、コショウをふる。
記者が挑戦
レシピにはアンチョビペーストや生クリームといった記者が普段使わない食材が並ぶ。特にアンチョビペーストを置いている店は少なかったが、大きいスーパーか輸入食品店で探せば手に入る。きのこの種類はお好みだが、今回はまいたけを選んだ。パスタは1.4mmの細めのものを使った。
レシピ通りにんにくとアンチョビペーストを炒めると、地中海らしいよい香りが鼻腔(びくう)に入ってくる。そこに下味をつけた鶏肉とまいたけを加えると、めんつゆのおかげか和風テイストに。肉に火が通ったら、後は生クリームを入れて煮立たせたらソースは完成。ゆでたパスタと混ぜ合わせ、意外と簡単に本格的なパスタが出来上がった。

実食してみる。甘くてクリーミーな味わいの中に、アンチョビの塩気が絶妙にアクセントを加え、味に深みをもたらしている。細めの麺には濃厚なソースがしっかりと絡み、一口ごとにその美味しさが広がる。多めの具材とソースの相性も抜群だ。
部屋にはニンニクとオリーブオイルの芳醇(ほうじゅん)な香りが漂っていた。一口食べると、その香りが口の中に広がり、次から次へと箸が進む。あっという間に完食してしまい、満足感とともに「もう一度作りたい」という思いが湧き上がった。自炊ならではの自分で作る楽しさと、生クリームやアンチョビを使ったソースの本格的な味わいを実感できる一品だった。
アンチョビペーストを使ってもう一品
アンチョビペーストはイワシを使った発酵食である、アンチョビをペースト状にしたもので、適度な塩味と魚介のうまみを料理に加えてくれる。これを使って他の料理を作れないかとスギアカツキさんに聞いたところ、野菜炒めがおすすめとのことだったので、作ってみることにした。
オリーブオイルをフライパンで加熱し、にんにくとアンチョビペーストを加える。香りが立ったら下ゆでしたブロッコリーとベーコンを入れ、炒め合わせると、にんにくと魚介が香る炒め物が完成した。

口に運ぶとちょうどよい塩味と魚介のコクが感じられ、自然と箸が進む。今回はブロッコリーとベーコンを使ったが、キャベツやもやしなど他の野菜にも合いそうな味付けだ。普段炒め物を作るとどうしても味が単調になりがちだが、調味料によって味がこれほど変化するのかと驚いた。【日】