学術ニュース

2024年4月21日

翼を震わせ「お先にどうぞ」シジュウカラのジェスチャーによるコミュニケーションを発見

 鈴木俊貴准教授、杉田典正特任研究員(共に東大先端科学技術研究センター)の研究グループは、野鳥の一種であるシジュウカラが翼の動きをジェスチャーとして用いてコミュニケーションを行っていることを発見した。成果は3月25日付で米科学誌『Current Biology』に掲載された。

 

 野生動物のジェスチャーの研究は、チンパンジーなどの類人猿の手足の動きに関する研究に限られており、それ以外の動物の動作とコミュニケーションの関係についてはほとんど明らかになっていなかった。

 

 今回の研究では、シジュウカラのつがい8組の動きを観察した。シジュウカラは一夫一妻制の鳥で、樹に開いた穴や巣箱に巣を作り、協力して子育てを行う。それらの穴や巣箱は小さく、2羽が一度に入ることはできない。

 

 研究チームは、シジュウカラのオスとメスが巣の中のヒナに餌を渡す際、巣に入る順番をジェスチャーを用いて決めていることを発見。オスとメスが同時に巣に近づいたとき、片方が翼を小刻みに前後に震わせると、もう片方が先に巣箱に入ることが分かった。オスよりもメスの方が翼を震わせる動作をすることが多かった。一方で、1羽で巣に入るときはこのような動作は観察されなかった(図)

 

シジュウカラ、ジェスチャー
巣箱に入る際に翼を震わせた回数。単独で巣箱に入る際には翼を震わせる動作は観察されなかった(図は発表資料より引用)

 

 今回の研究で、鳥の翼には飛行機能だけでなく、コミュニケーション機能もあることが分かった。成果は動物の思考や会話を理解することにつながる。また、ヒトのジェスチャーには言語能力と共通の認知基盤が関わっていることも示唆されており、動物のジェスチャーの研究がヒトの言語の起源や進化に関する研究へ貢献することも期待される。

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