東京大学音楽部管弦楽団(通称「東大オケ」)は、2023年2月12日(日)にサントリーホール大ホール(東京都港区赤坂)にて「東京大学音楽部管弦楽団 第108回定期演奏会」を開催する。(寄稿=釣田夏凜、東京大学音楽部管弦楽団)
東大オケは、東大で唯一の東大生のみで構成される、100年以上の伝統を持つオーケストラ。NHK交響楽団奏者などトップクラスの指導者陣の下、日本各地の一流ホールで演奏を行う。学園祭での演奏や大学式典での演奏を任されている他、学校を訪問して子どもたちへの音楽の普及を図る音楽教室も行っている。コンサートツアーを行うアマチュアオーケストラは日本でも数少なく、まさに伝統と実力のオーケストラだ。
その東大オケの演奏会が、今月12日に開催される。ホールは、日本一と称されるサントリーホールだ。曲目のメインを飾るサン=サーンス作曲の交響曲第3番『オルガン付き』では、ステージ後ろの巨大なオルガンが約2000人を収容する大きなホールに鳴り響く。迫力満点の演奏会となるだろう。
昨年の東大オケは、第107回定期演奏会に始まり、五月祭、サマーコンサート、駒場祭にて演奏会を行った。コロナ禍以降演奏会の中止が相次いでいたが、ようやく例年通り4つの演奏会を開催することができた年だった。しかしながら、昨夏のサマーコンサートでも、当初予定していた5公演のうち2公演がコロナにより中止となり、完全な形で演奏会を終えることができず、悔いが残った。
そんな中迎える2023年一発目の演奏会である第108回定期演奏会は、コロナ禍を乗り越えた新時代の東大オケの幕開けともいうべき重要な意味合いを持つ演奏会となるだろう。また、年度の締めくくりに行われるこの定期演奏会は4年生の引退公演でもあり、団員は皆特別な思いでこの演奏会を迎える。
4年生の宮野純(経済・4年)は、「今回の演奏会は、私たち最高学年にとって最後の演奏会となります。4年間の活動の大半はパンデミックと共にあり、やるせない思いをした機会は何度もありましたが、音楽を愛する仲間と共に、演奏を通してコミュニケーションを交わした日々はかけがえのないものでした。4年間の集大成として、それぞれがこの演奏会に対して特別な思いを持って臨みます。とはいえ、お客様に私たちのそんな個人的な事情を押しつけるつもりもありません。湧き上がる気持ちを音楽に昇華させ、お客様に満足していただけるような演奏ができるように日々練習に取り組んでいます。寒さの厳しい時期こそ、あたたかいホールでゆったりと演奏をお楽しみいただくのはいかがでしょうか」と語る。
こうした特別な意味を持つ第108回演奏会で、東大オケは「オールフランス・プログラム」に挑戦する。フランスといえば、「オシャレ」。重苦しく緻密なドイツ音楽を得意としてきた東大オケにとって、フランス音楽はまさに試金石といえるだろう。指揮をするのは、松尾葉子氏(客演指揮者)。松尾氏は、フランスのブザンソン国際指揮者コンクールで女性として史上初、日本人では小澤征爾についで二人目の優勝を果たし、長く東京芸術大学指揮科にて教壇に立った。フランス音楽を知り尽くした名女性指揮者を招き、東大オケは一体どんな化学反応を起こすのだろうか。
演奏曲目は、
・ベルリオーズ/序曲『ローマの謝肉祭』
・ドビュッシー/『海』―管弦楽のための3つの交響的素描
・サン=サーンス/交響曲第3番『オルガン付き』
の3曲。早春にぴったりの、華やかで爽快な曲ぞろいだ。
演奏会の幕を開けるのは、まぶしいほどに明るい旋律。ベルリオーズ作曲の序曲『ローマの謝肉祭』だ。そして続く2曲目はドビュッシー作曲の『海』。オーケストラで壮大な海が表現されるこの曲をホールで聴けば、大海原に投げ出されたような気持ちになるに違いない。本公演のチラシのデザインに使用されているのは葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』だが、ドビュッシーはこの絵に着想を得て『海』を作曲したとも言われている。そして休憩を挟み、プログラムのメインを飾るのはサン=サーンス作曲の交響曲第3番『オルガン付き』だ。優美で壮麗なオーケストラの旋律、ピアノの生み出すきらめき、そして荘厳で迫力満点なオルガンによるサン=サーンスの最も有名な作品である。
東大オケにとって新たなスタートとなる一年の幕開けにふさわしい絢爛豪華(けんらんごうか)なフランスプログラム。サントリーホールに満ちる東大オケの作り出すフランスの響き、是非ご体感ください。
コンサートマスターのコメント
今年の定期演奏会はフランスプログラム。メニューはベルリオーズ、ドビュッシー、サン=サーンスです。おなじの巨匠たちですが、その味わいは全く違います。
まずベルリオーズの『ローマの謝肉祭』。華やかな謝肉祭の情景を写し出しています。明るくスピード感のある響きは、メニューの最初の一品にふさわしい。コールアングレやヴィオラによって奏でられるアリアの旋律が華を添えます。
ドビュッシーの『海』は印象派の代表作ともいえる曲で、豊かな色彩感に加えて、どこかオリエンタルな響きが魅力です。海の見せる神秘的で複雑な表情はオードブルの後の魚料理のうま味!
そして、サン=サーンスの交響曲第3番『オルガン付き』。オルガンとオーケストラの奏でる荘厳な響きはまさにメインの肉料理!この曲は第104回定期演奏会でも演奏され、その録音が入学式でも披露されていましたが、オルガンですからやっぱり生は違います。お腹いっぱいになること間違いなし。
東大オケといえばドイツ音楽ですが、今年は指揮の松尾葉子シェフの力もお借りして、みなさんにおいしいフランス料理をお届けしたい! 2月12日はぜひサントリーホールまでお越し下さい。
大石副介(法・4年)
チケットは、演奏会特設ページ(https://ut-orch.com/108th/)から購入可能。