今月末に定期演奏会を控える東京大学音楽部管弦楽団。公演の内容や意気込みについて、団員から寄稿してもらった。(寄稿=宮本千央、東京大学音楽部管弦楽団)
東京大学音楽部管弦楽団(通称「東大オケ」)は、2022年1月に「第107回定期演奏会」と題した演奏会を行います。これまで弊団では毎年度定期演奏会を行ってきましたが、昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催中止となり、今回が2年ぶりの定期演奏会となります。
東大オケは、東大生のみで構成される唯一のオーケストラで、これまで大学の式典での演奏や日本各地のホールでのコンサートを行ってきました。2020年には創立100周年を迎えた、歴史と伝統のあるオーケストラです。
その東大オケの第107回定期演奏会が、来たる1月30日(日)の14時より、東京芸術劇場コンサートホールで開催されます。本番に向けて、団員一同意気込み十分に、日々練習に取り組んでいます。
今回披露する曲は
・チャイコフスキー 幻想序曲『ロメオとジュリエット』
・グラズノフ バレエ音楽『四季』Op.67より秋
・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
の3曲。19世紀後半のロシア音楽から、激動の時代を経て20世紀前半に形成されていったソビエト音楽の代表的な作品へと、存分に味わうことのできるプログラムとなっています。この冬の季節に、より一層楽しんでいただけるのではないでしょうか。
コンサートマスターからのコメント
2年ぶりとなる今回の定期演奏会では、ロシア・ソ連を代表する作曲家たちの名曲を演奏します。チャイコフスキーの幻想序曲『ロメオとジュリエット』は、かの有名なシェイクスピアの戯曲をもとに、対立する両家の闘争や男女の愛、そして衝撃的な結末を巧みなオーケストレーションで表現しています。グラズノフのバレエ音楽『四季』の終曲にあたる『秋』は、収穫を祝う華やかな音楽に始まり、1年を振り返るようにそれぞれの季節のフレーズが登場したのち、哀愁漂うアダージョが懐かしさを呼び起こし、バレエ全体を締めくくる壮大なフィナーレへと導きます。
そして本演奏会のメインとして演奏するのが、ショスタコーヴィチの交響曲第5番です。ソ連の作曲家であるショスタコーヴィチが、共産党からの批判を受けたことを契機に音楽家としての名誉挽回のために作曲した作品で、初演当時は社会主義国ソ連を讃(たた)える音楽と高く評価された一方、実は体制批判やアイロニーを込めたという見方もされています。強烈な怒りの1楽章に始まり、皮肉の効いた2楽章、嘆きと追悼の念を込めた3楽章、そして4楽章で狂信的な歓喜が聴衆を飲み込みます。
そうした背景を持つショスタコーヴィチの音楽は、心の内なる思いは誰にも奪えないことを訴えているように感じます。この数年で社会は一変し弊団も演奏活動が制限され苦悩の日々が続きましたが、団員誰一人として音楽への愛や情熱を失うことはなく、皆様に再び最高の音楽を届けられるよう幾多の困難を克服しながら日々練習に励んでおります。今回の演奏が皆様にとって平穏な日常を取り戻すための希望の光となれば幸いです。ご来場を心からお待ちしております。(神代峻、法・4年)
ぜひ当団第107回定期演奏会へ、多くの方々に足をお運びいただければ幸いです。
団員一同、良い演奏をお届けできるよう精一杯努力していきますと共に、皆様のご来場を心よりお待ちしております。
演奏会特設サイト:http://www.ut-orch.com/107th/