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2018年7月30日

ふるさとができる温泉の旅 東大温泉サークルが「湯治」体験イベント開催

 温泉に長期間滞在し、療養などをする「湯治」という行為をご存じだろうか。湯治は古くから日本の温泉文化の根幹をなしてきたが、最近では生活サイクルの変化や旅行の多様化の中で廃れつつある。その湯治をよみがえらせ、大学生に体験してもらうイベント「鳴子ワカモノ湯治」が今夏、東京大学温泉サークルOKR(おける)により開催される。OKR代表を務める橋本惇さん(文・3年)いわく、農作業で疲れた体を癒やすものだった従来の湯治を、現代社会の人間関係に疲れた心を癒やすものに改良した企画だという。今回、このイベントに向け準備を進めるOKRの3人を取材し、見どころなどを聞いた。

 

 今年で2回目を迎える「鳴子ワカモノ湯治」は、9月3日(月)から9月5日(水)まで、2泊3日で宮城県の東鳴子温泉に滞在し、湯治を体験できるイベントだ。参加者は個性豊かな多くの温泉に漬かり、地元の食材や名所を満喫するなど思い思いの時間を過ごすことができる。

 

昨年度のワカモノ湯治の様子

 

 まず3人に、ワカモノ湯治が従来の旅行とどのように違うのかを聞いてみた。一つ目は、慌ただしいスケジュールに追われずゆっくりできること。3日間大きな移動もなくリラックスすることで、人間関係や課題などに追われる日々の疲れを癒やすことができる。たとえば2日目は、参加者はOKR特製のガイドブックを渡され、東鳴子や隣の鳴子温泉を自由に散策する。時間や人目など何も気にせず自分の思うままに過ごせる、ゆとりのある行程だ。

 

 二つ目は温泉そのものをじっくり堪能できることだ。通常の旅行では温泉がメインになることはあまりなく、旅の通過点もしくは単なる宿泊場所という扱いになりがちだが、この企画では3日間たくさんの旅館や浴場に通い、温泉に文字通りどっぷり漬かることができる。岩下虎太郎さん(中央大学・2年)はワカモノ湯治を「温泉への入り口」と表現する。「マナーさえ守ってくれれば入り方は自由。自分がリラックスできる入り方を見つけてほしい」

 

 

 そして三つ目は地元の人と仲良くできることだ。岩下さんは、東鳴子は「『おかえり』と迎えてくれる、ふるさとのような場所」で、まるで「おじいちゃんとおばあちゃんの家」のようだと話す。宿の湯守りさんの子供と仲良くなったり、誕生日を祝ってもらったりと、もはや東鳴子の人は家族に近い存在だという。この地元の人の温かい心こそ東鳴子の良さだと、OKRの3人は口々に語ってくれた。

 

 今回開催地となる東鳴子は、東北の自然に抱かれた昔ながらの温泉街だ。橋本さんはこの地を選んだ理由に、古き良き湯治場の風情がよく残されていること、さまざまな個性の湯を体験できることを挙げる。一口に「温泉」と言っても、黒い温泉や透明な温泉、においのあまりしない温泉や硫黄のにおいのする温泉など、見た目やにおいなどがそれぞれ全く異なり、その違いを五感で味わうことができる場所だという。そのため、東鳴子は、知られざる多種多様な温泉の姿を体感するのに格好の場だ。昨年の参加者からは「温泉の奥深さが分かった」「肌がすべすべになるのがよく分かった」という声が上がっていたそうだが、これも個性豊かな湯を味わえる東鳴子のなせる業だろう。

 

 

 このワカモノ湯治だが高舘直稀さん(文Ⅰ・2年)は、「地域交流に興味がある人やふるさとが欲しい人には、特にワカモノ湯治に参加してほしい」と勧める。「東京で生まれると『帰る場所』がない人が多いが、ワカモノ湯治を通して帰りたくなるふるさとを得ることができる」と高舘さん。せわしない現代を生きる大学生にはぜひ、ワカモノ湯治に参加して新しくも懐かしい3日間を体験してほしい。

 

 鳴子ワカモノ湯治への参加申し込みは、企画公式サイトから。

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