河岡義裕特任教授(東大医科学研究所ウイルス感染部門)らの研究グループが、新型コロナウイルス変異株・オミクロン株BA.2系統の病原性や薬剤耐性について、BA.1系統と同程度であることを明らかにした。リスク評価、行政の感染対策、医療現場での治療薬選択の判断材料となることが期待される。今回の成果は17日付けの英国科学雑誌『Nature』オンライン速報版で公開された。
オミクロン株BA.2系統は今年1月上旬から増加し、現在では世界で最も流行している。新型コロナウイルスの変異では、ウイルス表面にあるスパイク蛋白質に違いが生じる。増殖力や病原性の変化、ワクチンや治療薬の効果が減る可能性があるが、BA.2系統株の特性はこれまで不明だった。
河岡特任教授らのグループは、ヒトの患者から分離したBA.2系統株をマウスやハムスターに感染させ、パンデミック初期の従来株、オミクロン株BA.1系統と比較した。その結果、BA.2系統株の増殖力と病原性は従来株より低く、BA.1系統株と同程度であると明らかになった。現在ある抗体薬や抗ウイルス薬がハムスターの肺におけるBA.2系統株の増殖を抑えることも分かった。中でも抗ウイルス薬のニルマトレルビル(ファイザー)、S-217622(塩野義)は鼻でも増殖を抑制した。
加えて同グループは、現在普及しているmRNAワクチンおよびコロナへの感染によって作られる抗体のオミクロン株に対する効果を検証。従来株やデルタ株に対する活性よりも低いことを明らかにした。
【記事修正】2022年6月16日午前11時16分 「米国科学雑誌『Nature』」としていましたが、正しくは「英国科学雑誌『Nature』」でした。お詫びして訂正します。