スウェーデン王立科学アカデミーは10月5日、本年度のノーベル物理学賞を米プリンストン大学の真鍋淑郎上級研究員らに授与すると発表した。真鍋氏は気候モデルを開発し、地球温暖化を予測するなど気候研究に貢献した。
真鍋氏は1953年東大理学部卒、58年に理学系研究科で理学博士号を取得した。博士号取得後は米国海洋大気庁・地球流体力学研究所で気候研究に取り組んだ。67年に、研究の第一歩となる「一次元大気モデル」を開発。これは大気が地面から垂直に立った高さ40kmの1本の円柱であると仮定し、空気の対流によって生じる気温変化を高度ごとに予測するものだ。このシミュレーションを通じ、大気中の二酸化炭素量を2倍にすることで、気温が約2度上昇することを発見した。69年にはこのモデルを基にした大気大循環モデルと海洋大循環モデルを一つにすることで、現在の気候研究モデルの基礎となる大気海洋結合大循環モデルを開発するなど、半世紀以上にわたり現在の気候研究の基盤を築いてきた。
受賞直後の電話インタビューの中で「今まで地球温暖化という分野でノーベル賞が授与されたことがなかったが、今回スウェーデン王立科学アカデミーがこの分野を選んでくれて、とても喜んでいる」と語った。また、プリンストン大学での記者会見において「受賞には驚いているが、光栄に思っています」と、喜びを語った。
賞金は1000万スウェーデンクローナ(約1億2800万円)を他の物理学賞受賞者らと分け合う。授賞式は12月10日にオンラインで実施される。
真鍋氏の受賞に際し、東大の藤井総長は「真鍋先生の栄誉を心からお祝い申し上げます」と、お祝いのメッセージを送っている。また、星野真弘理学系研究科・理学部長は地球環境問題が人類社会の大きな課題になっている中で気候モデル開発の研究成果が高く評価されたことに大きな意味があるとし「東京大学大学院理学系研究科の大先輩が受賞されたことを心よりお祝い申し上げます」と、喜びの言葉を贈った。