記者が東大に入学して4年が過ぎた。主に学校生活・食生活・社会面から日本での生活を振り返る。
記者は日本に来る前に、日本語を母語としない人向けの日本語能力試験の最上級であるN1を取り自信満々だったが、最初のゼミに参加した時に衝撃を受けた。日本語の一般的な文章を読める能力から専門用語のあふれる学術的な文章を自然に書ける水準に至るまでの巨大な格差を認識し、その隔たりを埋めるため、文章の論理性向上に努める日々だった。
ゼミでの議論を通して、自分と異なる意見を受け止める寛大な心も持てるようになった。自分の意見に反論が存在するのは、確固たる根拠がなかったり、分かりやすさにもう一工夫が必要だったりするのではないかなど、反省する習慣が付いた。議論はあくまでもより客観的な結論に導く手段の一つだ。
また、東京大学新聞社で発行される毎回の新聞は、各面各部分の担当者による合成力があってからこそ、でき上がったものだと実感した。チーム力の結晶という感動や自分の考え方をより多くの読者と分かち合える達成感が常に湧いている。加えて、2018年は東京大学中国茶同好会の駒場祭運営メンバーの一人として関わり、周りの日本人の仲間による中国茶の知識への追求精神に感銘を受けた。彼らのおかげで、中国茶は製造方法や発酵度合いで黒茶や黄茶、白茶など大きく6種類に分かれることを知ることができた。
食生活に関しては、朝食の飲み物を例にとると、日本はみそ汁が中心で、中国は地域によって異なるものの、豆乳・スープ(チキンスープなど)・おかゆ(青物・かぼちゃ・あわ・ピータン豚肉)が中心だ。来日まで生魚は食べたことがなく、中国では煮込み魚が一般的だった。
社会面では、正直日本に来る前は自分がうるさいという自覚は全くなく、明るい自分だと認識していた。日本で中国人の友達にたびたび注意されたのを契機に考えたところ「うるさい」と「明るい」の間にある明確な一線への認識が欠如していて、公共の場への意識が弱かったと感じた。一方で「堂々と話すべき」という中国の学校教育上の理念は話す声の大きさに一定の影響を及ぼしていると思う。堂々と話すことに慣れている記者は自らの話に夢中になった結果、音量へのコントロールを忘れてしまうのではないかと思う。
「郷に入れば郷に従え」と指摘されても、慣れるまでかなりの過程が必要だ。隣国であるがゆえに、お互いの文化・風習に関する知識をより増やしておく必要があると考える。
この記事は、2019年2月5日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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