文化

2019年1月21日

【日本というキャンパスで⑥】弁論大会、やじにも負けず

 12月2日、東京農業大学百周年記念講堂にて開催された第52回農林水産大臣杯争奪全日本学生弁論大会に、記者が第一高等学校・東京大学弁論部の129期弁士として出場した。弁論部の仲間による丁寧な指導のおかげで、初出場の記者だったが予想のはるか上を行く第3位に入賞した。

 

 記者は既に3回学会発表を経験しているが、弁論と学会発表の相違点は主に2点ある。1点目は、弁論では聴衆によるやじがある点。やじに怯まず、自らの観点をいかにはっきり伝えるかが課題となる。2点目は、弁論では質問者の持つ背景知識を予想することが難しいため、どのような質問にも対応できるように幅広く準備する必要がある点だ。

 

農林水産大臣杯争奪全日本学生弁論大会で熱弁中の記者

 

 今回は、自分の演題であった「持続可能な緑化活動の実現へ」を例に、原稿作成の手順を説明する。まず森林ボランティア団体が森林の多面的機能の維持に果たす重要な役割に関する「現状説明」を行った。続いて、森林ボランティア団体の人員の不足・財政の切迫などが深刻になり、持続可能な緑化活動を実現させるのが困難になりつつあるという「問題」を提起した。加えて、人員不足が生じた原因は若者が林業に無関心であるからだという問題への「原因分析」を行った。その際、森林ボランティア団体の活動を支援している会員のうち、大学生がわずか1%にとどまっているという問題の「深刻さ」を意識させた。

 

 その上で、若者に実際の活動に足を運ばせるため「森林保全ポイント」を創設するという「方策」が必要だと訴えた。具体的には、森林保全活動に参加すると森林保全ポイントがたまり、環境系企業がそのポイント数を雇用時の判断材料にするという制度を提示した。この方策を実行することで、就活の一環でボランティアに参加する人が増える「短期効果」と、活動を通じて森林への愛着が生じ、環境系企業以外の業界に転職した人もボランティア活動に引き続き関わる「長期効果」が見込まれる。さらに、ポイント制度を利用する企業からは地球温暖化対策税を低く徴収するなど、ポイント制度普及に向けた方策も練っておく必要がある。

 

 原稿執筆時の注意事項は、自らの弁論に面白み・独創性があるか、耳のみで理解できる言葉遣いになっているかどうかなどの点が挙げられる。本番で登壇した際は、声調や態度にも注意した。間の取り方・強弱といった話し方や、問い掛け・表情・身ぶり手ぶりなどの表現手法は説得力のある弁論にするために不可欠な要素だろう。

 

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この記事は、2018年12月18日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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