高額商品の取引や大手企業の事業参入が話題を呼んでいるNFT。耳にしたことはあるけどよく分からないという人も多いのでは? そこで、映画『戦場のメリークリスマス』で使用された坂本龍一氏の楽曲『Merry Christmas Mr. Lawrence』のNFTなどで話題を呼んだNFTマーケットを運営するGMOアダムに話を聞いた。(取材・松崎文香)
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NFTは「一点もの」
──NFTとはなんですか
デジタルデータとは本来複製が容易なものでしたが、NFTはデジタルアートと非代替性トークンを結びつけることで、オリジナルデータを見分けることを可能にした技術です。Non-Fungible Tokenの略称で、日本語では「非代替性トークン」といわれます。NFTと何かをひも付けたものがNFT〇〇と呼ばれます。
例えばNFT関連でよく耳にする「NFTアート」とはデジタルアートをNFT化したものです。タブレット上で描かれたイラストなどのデジタルアートは、文書や写真などのデジタルデータと同じく複製が容易で、複製されてしまった際どれがオリジナルか分からないという課題がありました。Twitter創業者の一人が、自身が2006年に投稿した世界初のツイートをNFT化して販売したことで、NFTの技術自体に注目が集まり、データがオリジナルだと証明することが可能だと認知されました。以来、アーティストが作品をNFT化するようになり、NFTアートが広まっていきました。
──どういった目的でNFTを購入する人が多いのですか
投機目的の人、NFTを購入することでクリエイターを応援したいというファンの人、よく分からないけど面白そうと興味を持って購入する人などさまざまです。NFTが世に広まりはじめた当初は投機目的の購入者が多かったように感じますが、今はクリエイターのファンも多くなって来ていると思います。イラストの場合はダウンロードしたデータをSNSのアイコンなどに設定して楽しむ方が多いです。NFTに付属する特典を楽しみに購入する方もいます。
また、「エアドロップ」といって、特定のNFTを持っている人に後日別のNFTをプレゼントするという、オンラインだからこそ可能なファンコミュニケーション方法もあります。他には、小室哲哉さんが出品した楽曲のNFTには、その音源を利用して新たな作品を作ることができる権利が付属していました。もちろん通常の楽曲配信でも二次利用が認められる場合はありますが、取引の履歴や出品者が明確に記録されるNFTの方が、誰が使用するかわからない通常のインターネット配信よりも、二次利用を認めるハードルは低いのかなと思います。
──いくらでも複製できるデータではなく「唯一無二のオリジナル」であるからこそ、NFTは価値があるのだと思います。一方で、レアな一点ものはデジタルではなく「リアル」で所有できた方がうれしいという声もあると思いますが
例えばどこにでもあるペンであったとしても、仮にそれが世界に1本しかなければ、おそらく何百万円もの価値を帯びると思います。しかし、実際には世の中にいくらでも同じものがあるから、多くの人はペン1本に高い価値を感じませんよね。これは触れることができるものであってもなくても同じだと思います。だからこそ、デジタル上でも「世界に一つしかない貴重なもの」だと実感していただければ、触れることができないNFTであっても価値を感じてもらえると考えています。
──NFTの取引における課題などはありますか
取引の履歴などを改ざんすることは事実上不可能なのですが、出品段階で偽物を本物と偽って出品されてしまうと見抜くことが難しい場合があります。そのため、初めに商品と信用情報を結びつける立場にある企業が信頼できるのかが問題になっています。
──日本におけるNFTの今後の展望を教えてください
世界ではNFTはすでに経済圏を確立していますが、国内の認知度はまだまだ低いのが現状です。長期的に見れば、海外と同様に市場は拡大すると思いますが、まずはファンコミュニケーションのツールとして普及すると思います。NFTを購入してファンがクリエイターを応援するという形が確立するのが、国内におけるNFTの第一歩ではないでしょうか。
NFTでクリエイターを応援
──GMOグループが運営するマーケットプレイスAdam byGMOではどのようなNFTが取引されていますか
アートやイラストのNFTが多くを占めています。例えば売上げの一部を社会貢献活動の資金に充てることを目的に販売している商品など、企画がらみの商品も多いです。坂本龍一さんの代表的な楽曲である『Merry Christmas Mr. Lawrence』の一音一音をNFT化した商品など、大きな話題を呼んだものもあります。
──坂本龍一さんや小室哲哉さんなど、著名なクリエイターとコラボする理由は何ですか
高額取引などが話題になりNFTの認知度は高まってきていますが、まだまだ国内では理解されるのに時間がかかるかもしれません。そこで、ファンコミュニティーが大きいところからNFTを普及させていくために、著名な方に積極的に出品していただいています。
──どういったクリエイターに出品してほしいですか
興味があればどんな方にも参加してほしいです。Adam byGMOを創設したのは、GMOインターネットグループ内において以前からブロックチェーン関連事業・EC等事業・Eコマース事業を手掛けており、サービスを提供できるノウハウがあったことに加え、アートコレクターでもあるグループの代表にクリエイターを応援したいという気持ちがあったためです。すでに著名な方にはNFT自体を盛り上げていただきながら、Adamで販路を拡大してもらう一方で、クリエイターとしてこれから活動したいと考えている方にもぜひAdamでNFTクリエイターとしてデビューしていただきたいと思っています。
クリエイターから購入した商品を転売する二次流通の際に、クリエイターに利益の一部が「ロイヤリティ」として入る仕組みや、世界中の誰とでも気軽に安心して売買ができるのは、NFTならではです。クリエイターの方にはAdamを通じて収益を得てもらい、それを活動資金にして新たな創作活動につなげていただきたいと思います。
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【記事修正】2022年5月23日12時58分 1枚目の写真を差し替えました。
【記事修正】2022年5月23日13時24分 2枚目の写真を差し替えました。また脱字を一箇所修正しました。