東京大学新聞社では今年も東大に関するさまざまなニュースを報じた。コロナ禍の制限緩和やウクライナ侵攻、ダイバーシティ&インクルージョン。世間でも話題になった出来事に東大や学生はどのように対応し、どのような変化を見せたか。今年1年の東大を各観点から振り返る。(構成・金井貴広)
【目次】
【施設・イベント 再始動】ハイブリッド学園祭・食堂の再開も
▶対面のオリ行事や学園祭が部分的に復活
▶生協食堂や図書館も営業・利用拡大
▶オープンキャンパスなどは今年もオンラインだった
新型コロナウイルスがキャンパスライフに影響を与えてから3年が経とうとしている。今年の東大では、学園祭のハイブリッド開催(対面とオンラインを組み合わせた形式)、生協食堂の営業再開などがあった一方、全面オンラインや入場制限のかかったイベントもあった。
2月にはオミクロン株の拡大で一時緩和された活動制限指針が引き上げ。3月には春の入学式への保護者招待も一転して取りやめられ、「オリ合宿」(主に新入生を対象に、親睦を深めるためにクラス単位で行う旅行)は3年連続で中止だった。しかしSセメスター直前には活動制限指針が再び引き下げに。オリ合宿の代替である日帰りの「オリ旅行」と合わせて、サークルオリエンテーションや諸手続後新歓活動などは3年ぶりに対面で開催された。オリ旅行に参加した1年生は「クラスメートの多くと気軽に話せるようになった」などと振り返る。
前期教養課程の対面授業の本格的な再開を受け、駒場では生協食堂1階「若葉」が夜までの営業を、2階「銀杏」が19年度末ぶりの営業を再開。本郷でも第二食堂(1月)、銀杏メトロ食堂(9月)が営業を再開している。総合図書館・駒場図書館も利用制限を緩和し、それぞれ4月・8月に学外者の利用を条件付きで認めた。
五月祭・駒場祭はともに初めてハイブリッドで開催。いずれもキャンパスへの来場は事前予約制で、入構者数に制限があった。駒場祭では飲食企画を「飲食ブロック」と呼ばれるエリアで提供することが認められ、エリアには長蛇の列ができた。音楽系サークルによる演奏のリアルタイム配信など、ハイブリッドの強みを生かした工夫もあった。昨年12月に学外者の入構が許可され、東大へ見学に訪れる高校生の姿もあった一方、夏のオープンキャンパスは今年も全面オンライン開催だった。来年3月の前期日程試験合格者番号はキャンパスで掲示されないことも決まっており、ともに感染防止のためとされている。
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【ダイバーシティ&インクルージョン】女性支援など強化 学生からの動きも
▶「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を発表
▶構成員の意識を喚起する取り組み
▶学生の声を受けジェンダーフリーの設備の充実
東大は「東京大学ダイバーシティ&インクルージョン宣言」(資料)を6月に発表した。さまざまな背景や属性を持つ大学構成員が差別や不当な排除を受けないことを示した宣言では、「ダイバーシティ(多様性)の尊重」として基本的人権の尊重と対話の実践を行い「インクルージョン(包摂性)の推進」としてコミュニティーの一員である意識を構成員が抱けるようにするとされている。今年の東大ではダイバーシティ&インクルージョン(D&I)実現に向けた動きが多数見られた。東大は3月から「UTokyo D&Iキャンペーン2022」を開催。多様性と包摂性についてシンポジウムや公開講座を行った。障がい者支援・留学生支援に関する発信も複数行われている。
今年進んだ具体的な取り組みは女性を主な対象にしたものが多い。女性リーダー育成の施策として11月に「UTokyo男女+協働改革 #WeChange」始動を発表。女性の教授・准教授を2027年度までに合計300人程度新規採用する計画を明らかにした。
大学院工学系研究科・工学部は7月、メタバース工学部の設置を発表。年齢や立場にかかわらず学べる環境をつくり、最新の工学と情報学に関するオンラインプログラムを提供する。特に女子中高生に魅力を伝え、デジタルトランスフォーメーション(DX)を担える人材のダイバーシティ推進を加速させる。
学生から大学への働きかけによる、多様な視点の反映も進みつつある。教養学部は10月から駒場Iキャンパス内の女子トイレと多目的トイレで生理用品の無償配布を試験的に開始。教養学部学生自治会が行ってきた交渉が実現した形で、自治会は独自に男子トイレにも設置を行った。三鷹国際学生宿舎でも、性的マイノリティーに配慮した空間を求める声が学生から上がり、多様な性自認に配慮した空間の増設を検討している。
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