報道特集

2022年12月25日

【2022年 東大ニュースを振り返る】① 対面授業再開&②ウクライナ情勢関連

 

 東京大学新聞社では今年も東大に関するさまざまなニュースを報じた。コロナ禍の制限緩和やウクライナ侵攻、ダイバーシティ&インクルージョン。世間でも話題になった出来事に東大や学生はどのように対応し、どのような変化を見せたか。今年1年の東大を各観点から振り返る。(構成・金井貴広)

 

【目次】

①対面授業再開 ②ウクライナ情勢関連

③イベント・施設再始動/④ダイバーシティ&インクルージョン

 

【授業形態】オンライン授業から対面へ

 

▶4月、前期教養課程で対面授業を基本とした授業体制

▶「オンライン授業」は卒業単位のうち60単位まで

▶新年度開始直後には全学的なネットワーク障害が発生

 

対面授業が再開したことで、駒場の生協食堂の利用も増えた

 

 4月中旬から教養学部では原則対面での授業が再開した。2020年4月に全部局で授業がオンライン開講となって以来、教養学部は一部を除きオンライン授業を基本としていたため、3年ぶりに新入生が対面を基本とした体制で授業を受けられることに。一方、オンラインの方が教育的効果が高い場合や教員に個別の事情がある場合にはオンライン授業が採用されることになった。

 

 同月、対面授業への移行に伴ってオンライン授業に関する取り決めが整理された。授業実施形態が新しく区分され(表1)、総時間数の半数以上を対面で実施する授業が「対面授業」、半数以上がオンラインの授業が「オンライン授業」と定義され、「オンライン授業」は60単位のみを卒業単位に算入できることになった。ただし、21年度末までに取得済みの単位は特例的に全て対面授業として扱われる。同じく4月に、全学の活動制限指針と駒場Iキャンパスの警戒ステージも対面授業を行いやすいような形に再編された。活動制限レベルは3月28日のレベルBからの引き下げ以降、12月24日現在もAが継続されている。

 

(表)新年度に合わせ区分の整理が行われた授業実施形態

 

 6月には、対面授業再開などを背景に、新型コロナウイルス感染が疑われる場合の定期試験の代替措置を廃止することを教養学部が発表した。コロナ感染や濃厚接触による定期試験欠席の扱いは他の病気や事故での欠席と同等に。100点が上限の追試験はなくなった。一部の学生から反対の声が上がり、教養学部学生自治会は代替措置の継続を求めた。

 

 一方、キャンパスに来る人数が増加したことによる問題も発生した。4月には7日、11日、14日と立て続けに全学規模で学内ネットワークの障害が起こり、UTokyo WiFiや学内システムへアクセスできない事態が発生した。特に、7日と11日の障害はキャンパスからオンライン授業に参加する学生の増加によるファイアウォールの過負荷が原因だった。東大はルーター・ファイアウォールなどの通信設備の設定調整を含む暫定的な措置を取り、以降、全学規模のネットワーク障害は発生していない。情報基盤センターによると、来年度にはより高い処理能力のファイアウォール機器導入など、ネット環境改善のための整備も進める予定。

 

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【ウクライナ情勢】 33 人の学生・研究者を受け入れ 新たな授業も

 

藤井総長がロシアの行動を非難、関係する大学構成員などへの影響を懸念

▶スラヴ研究室・露東欧コースともに直接的な差別被害確認されず

▶影響受けた学生・研究者の「特別受入れプログラム」を実施

 

「特別受入れプログラム」を支える「東京大学緊急人道支援基金」も開設された。12月7日時点で1550万円ほどの寄付が集まっている

 

 ロシアのプーチン大統領がウクライナの首都・キーウなどへの攻撃を開始した翌日の2月25日に、藤井輝夫総長はメッセージを公表。ロシアの行動を非難する姿勢を示すとともに、ウクライナやロシアと関係の深い大学構成員とその家族が大きな影響を受ける可能性を指摘。必要な対応を行うと述べた。文学部スラヴ語スラヴ文学研究室(スラヴ研究室)と教養学部地域文化研究分科ロシア東欧研究コース(露東欧コース)は4月の東京大学新聞社の取材に対し、研究室やコースに所属する学生への直接的な差別被害は確認されていないとしつつ「ロシア語を使いロシアに関連することを今研究することに意義があり、誇りをもって進めるべき」(露東欧コース、原文を抜粋・一部編集して掲載)といったメッセージを伝えていると明かした。スラヴ研究室は本年度から新たに「ウクライナの多様な文化を学ぶ」という授業を開講し、ウクライナの文化の多様性の発信や共存の在り方の考察をしている。

 

 3月30日にはウクライナ侵攻により影響を受けた学生・研究者を対象とした「特別受入れプログラム」の実施を東大が告知した。「ロシアによるウクライナへの武力侵攻により、学ぶ場や研究する場を安全に確保することができなくなった学生及び研究者」を対象とし、部局ごとのプログラムを提供するほか、渡航費用や生活支援金の支給といった経済的支援や住居支援、生活支援も実施。当初は「支援期間」の期限としていた23年3月末を「申請受付」の期限に変更することで実質的なプログラム運用期間の延長を行った。東京大学新聞社の取材によると、受入期間を原則1年間とする学生・研究者33名の受け入れが決定し、その内26人が渡日済みだという(11月24日現在)。原則として最長1年間の受け入れを想定しているが、進学や就職などの理由で引き続き支援が必要な場合は、支援期間の延長もあり得るとしている。

 

 

 4月12日の春の学部入学式では河瀨直美氏が祝辞で「『ロシア』という国を悪者にすることは簡単である」「『悪』を存在させることで、私は安心していないだろうか?」などと発言。学内外で議論を呼んだ。

 

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