東大が参加するT2K実験国際共同研究グループは、素粒子ニュートリノが空間を伝わるうちに別の種類のニュートリノに変化する現象「ニュートリノ振動」で、粒子と反粒子の振る舞いに違いを与える量「CP位相角」が取り得る値の範囲を限定することに成功した。成果は16日付の英科学誌『ネイチャー』に掲載された。
素粒子には、性質は同じだが電荷の正負が反対の反粒子が存在する。「CP対称性が成り立つ」とは、粒子と反粒子が同様に振る舞うことを意味する。しかし実際は、宇宙の始まりに粒子と同数存在し、粒子と合わさると消滅する反粒子は、現在の宇宙に存在しないため、CP対称性は破れているとされる。そこで、宇宙成立の謎の解明に寄与する可能性が高いニュートリノのCP対称性の破れの測定が注目されている。
研究ではニュートリノの粒子と反粒子の振る舞いに違いがあるかを調べるため、CP位相角という値を測定。CP位相角の値は不明だが、0度や180度を取るとき、粒子と反粒子は同様に振る舞うとされる。
実験では、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設「J―PARC」で大量のニュートリノを生成し、岐阜県飛騨市の「スーパーカミオカンデ」で測定。ニュートリノが空間を伝わるうちに周期的に別の種類のニュートリノに変化するニュートリノ振動現象を利用して、変化確率を調べた。結果、ニュートリノのCP位相角の値として、マイナス2度から165度の領域が99.7%の信頼度で排除されることが分かった。
今回の成果は、ニュートリノの粒子と反粒子の性質に違いがあるかに迫る成果となり、今後の測定精度を高めた検証が期待される。
この記事は2020年4月28日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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