倉持昌弘助教(新領域創成科学研究科)らは、低温下での生存が困難な線虫に対し特定のタンパク質を用いることで、低温下での生存率が著しく高まることを世界で初めて示した。移植臓器や食品などにおける新しい保存技術の開発が期待される。成果は5月15日付の英科学誌『サイエンティフィックリポーツ』(電子版)に掲載された。
今回用いたのは、氷結合タンパク質(Ice-Binding Protain:IBP)。氷結晶の表面に吸着して結晶の成長を阻み、細胞や組織の損傷を防ぐことが知られてきたが、低温下での個体動物の耐性や細胞機能への効果は研究されてこなかった。
倉持助教らは、線虫C.エレガンスの成虫をマイナス5度の環境に1日間さらした後、生存した個体数の割合から生存率を算出。野生型線虫では7%だった生存率が、IBPを発現させた線虫では72%に上がった。0℃でも生存率が上昇したことから、氷結晶があまり存在しない環境でも、IBPが効果を持つことが確認できた。
IBPの発現部位を変えると生存率上昇の効果に違いが見られた。IBPの最適な導入法を探ることで、移植臓器や食品などで、低温下や長期常温下での新しい保存技術の開発が進むと期待される。