入試本番まであと少し。理系研究をより分かりやすく伝えるために論文に載せるイラストを制作する事業「Nakajima Science Graphics」を起こした中島佑佳さん(工学系・修士2年)に、自身の受験や東大での生活について語ってもらった。学びにあふれた東大生活を想像し、 東大で活躍するイメージを持って、全力を出し切ってほしい。(取材・葉いずみ)
━━「Nakajima Science Graphics」での取り組みについて教えてください
理系の研究をより分かりやすく伝えるため、論文に載せるイラストを制作する事業「Nakajima Science Graphics」を1年半ほど前から行い、代表を務めています。論文の特定の項目を説明した挿絵やグラフィカルアブストラクト、研究概要を示すイラストなどを制作しています。事業のきっかけは、いろいろな研究者の発表を見ていて「研究内容は興味深いけど、文章だけでなく絵も活用すれば一層分かりやすく魅力が伝わるのに」と感じたことでした。そこで理系東大生と美大生が共同してイラスト制作を行い、科学を分かりやすく伝える事業を始めました。
科学知識を持つ理系東大生がデザイン作成に関わり、科学的に正確なイラストにしている点が事業のポイントです。制作の主な流れとして、研究者からイラスト作成依頼を受けると、その方の研究と近い領域を専攻し、基礎知識を持つ東大生が担当につきます。担当者は研究者の論文を読み内容を解釈し、どのようなイラストなら分かりやすく研究内容を伝えられるかの仮説を持った上で、研究者と話し合ってデザインを決めます。これを基にイラストを仕上げるのは美大生です。タッチや立体感など細部までこだわって描きます。
━━東大を志望した理由は
母校は中高一貫校なのですが、10年以上東大合格者が出ていませんでした。しかし中高6年間担任だった先生が東大を目標にしたらと言い続けてくれて、一番上を目指すのってかっこいいなと感じたのもあり、挑戦しました。
━━受験当日から発表日までどのように過ごしましたか
当日は不思議とあまり緊張しなくて。というのも私の学年は東大志望者が何人かいて、一緒に勉強していたので1人で受験している気がしなかったんです。試験後、合格の手応えがあったわけではないけれど、全部出し切れたとは思いました。その後は神戸大の後期日程試験を受験予定だったのでその勉強をするはずでしたが、あまり手につかず合格をお祈りしていました(笑)。
━━東大の環境についてどのように考えていますか
出身の大阪に比べて東京は人々のコミュニティーが多い点が魅力的です。自分が発信し続ければ、同じ興味関心を持つ人に容易に出会えます。このおかげで論文イラスト事業への美大生協力者を見つけることができました。
東大では魅力的な研究者にもすぐ会えます。面白い研究をしている人が狭いキャンパスに集まっており、興味のある先生にメールをすれば学生でも話を聞いてくれるので、この環境をぜひ活用してほしいです。
━━大学で現在学んでいることについて教えてください
貝殻や骨などの、自然淘汰(とうた)を経て今の形に至った生物の機能に着想を得た素材開発をしています。特に現在取り組んでいるのは、歯の成分に倣った伸張する素材です。学部3年次に研究室早期配属制度を利用して早めに研究室に入って以来、研究を続けています。私の中に「興味を抱いたら、本当に興味があるのか確かめるためにとりあえず始めよう」というモットーがあって。興味を惹(ひ)かれる、ピンとくることに出会えるのはラッキーなことだと思うので、せっかく見つけたならそれにどっぷり浸かりたいです。研究の道も、3年次に一番興味があったから飛び込みました。
研究を始めて約3年半。ものづくりの面白さを感じています。新規素材開発の段階ではまだその素材の活用法は絞られていません。素材独自の性質を受けて、医療や服飾などさまざまな領域の人たちが集まり、協力しながら素材活用の可能性を広げていく点が面白いです。
━━今後の展望は
私は研究もとても好きなのですが、論文イラストの事業のような「伝える」行為がそれ以上に好きです。そこで、人に商品の魅力を伝えるマーケティングの仕事に就く予定です。もちろん就職後も論文イラスト事業は続けていくつもりです!
━━受験生へのメッセージをお願いします
例えば3時間国語を勉強した後に3時間数学をするのと、1時間ずつ交互に国語と数学をするのとでは、どちらが合うかは人それぞれです。私は達成感があるとうれしいので、1日の勉強時間を記録してモチベーションを維持していました。自分に合った楽しく勉強できる方法を見つけて、受験を駆け抜けてください!
「Nakajima Science Graphics」の公式サイトはこちら
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