明治末期の北海道・樺太にて、奪われたアイヌの金塊を巡り、アイヌの少女アシㇼパと元兵士・杉元佐一は、情報将校・鶴見篤四郎率いる第七師団や幕末の「亡霊」土方歳三の一派と死闘を繰り広げる。金塊の手掛かりは、網走監獄の24人の脱獄囚に彫られた刺青(いれずみ)のみ──。
2022年4月末、明治末期の北海道・樺太を舞台に金塊を巡る争奪戦を描いた『ゴールデンカムイ』(集英社)は8年間の連載を終えた。本作品のイラストや原稿、作中に登場した民具などの関連資料の数々を展示した大展覧会が東京ドームシティ Gallery AaMoにて約2ヶ月間開催された。
来場者特典(日)(©︎野田サトル/集英社)
「強烈な『生』を感じる」。本展覧会を鑑賞した後、記者が最初に抱いた感想だ。作品の登場人物たちの持ち物や衣服のモデルになった資料を実際に見ることができるとはなんと貴重な体験であろうか。杉元の軍帽、アシㇼパのマキリ(小刀)のモデルになった資料が、目の前にあるのである。品々のすりへりや傷を見ると、登場人物たちの「生きた痕跡」が感じられ、彼らの体温さえも伝わってきそうである。漫画の展覧会は原稿やカラーイラストのみを飾るのが一般的だが、本展覧会ではアイヌの民具や衣服から大日本帝国陸軍の軍服、歩兵銃などに至るまで貴重な品々が一堂に会している。さらにほぼ全てに「野田サトル氏所蔵」と記してあり、一つ一つに作者のコメントが付いている。作者の本作品への情熱の強さ、そして取材の綿密さに驚かされる。
全6章の展示では、杉元とアシㇼパの旅路をたどることができる。第1章では金塊争奪戦の参加者たちの「生きた痕跡」を、第2章では24人の個性豊かな囚人たちの「生の煌(きら)めき」を、第3章ではアイヌ民族や、杉元たちが出会った北方のさまざまな民族が紡ぐ暮らしを追体験する構成となっている。第4章では網走、樺太、札幌での死闘の原稿が、第5章では美麗なカラーイラストが展示されていた。特に樺太の流氷上の決戦の原稿は、緊迫した空気が筆致やトーンの一つ一つから伝わり、文字通り「魂を削って」描いていたのだという凄みが感じられた。第6章は、作者の描きおろしイラストや物語終盤に関する展示を見ることができる。ここで多くを語るよりも、ぜひ会場に足を運んでみてほしい。驚き、感動し、泣いて泣いて涙も枯れたころ、最後にクスッと笑える。まさに『ゴールデンカムイ』らしい終わり方である。
「連載完結記念 ゴールデンカムイ展」は現在京都文化博物館で開催中、今後福岡、北海道と全国を巡回予定である。ぜひ彼らの「生き抜いた価値」を見届けに行ってほしい。【舞】
【開催概要】 連載完結記念 ゴールデンカムイ展
会期:〜9月11日(日) 会場:京都文化博物館
休館日:月曜日 開室時間:10:00〜18:00 金曜日は19:30まで(入場はそれぞれの30分前まで)