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2019年9月16日

宮崎早野論文に関するフォーラム開催 東大調査の不備指摘

 黒川眞一氏(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)ら有志の研究者らは14日、早野龍五氏(理学系研究科元教授)らが発表した福島県伊達市の市民の外部被ばく線量に関する論文の不正疑惑を巡って、オープンフォーラムを開催した。この中で黒川氏は、東大科学研究行動規範委員会(規範委)が今年7月に公表した調査結果の問題点を指摘した。

 

講演する黒川眞一氏(撮影・山口岳大)

 

 規範委の調査結果は、2018年12月に伊達市民の一人が行った、同論文の倫理指針違反と研究不正に関する申し立てを受けて公表されたもの。この申し立てでは、①データ提供に同意していない市民のデータの使用、②福島県立医科大の倫理委員会への研究計画書提出前の研究発表——の2点の倫理指針違反と、①論文発表後1年経過した時点での全ての資料・情報の破棄、②講演で用いられたスライドと論文のグラフの値に見られる齟齬(そご)——の2点の研究不正が指摘されていた。これに対し規範委は、倫理指針違反は調査範囲外のため判断しないとし、研究不正についてはいずれも認めなかった。論文の共同執筆者が所属する福島県立医科大の調査結果も東大の発表と同日に公表され、倫理指針違反、研究不正ともに認められなかった。

 黒川氏は規範委の調査結果について、申立人が指摘した点以外の調査がなされていないと批判。申立人の知り得る情報が限定されている以上、規範委は指摘を手がかりにより詳細に調査すべきだったとした。また、倫理指針違反が調査されなかったことも「非常に不可解」だと述べた。福島県立医科大への申し立ての内容が東大への申し立てと一部異なっていたにもかかわらず、研究不正の調査結果が両者で同様だったことから、福島県立医科大の調査結果が、東大の調査結果を踏まえたものになっているのでないかという点も示唆した。

 黒川氏は東京大学新聞の取材に対し、さらに調査を進めた上で再度申し立てが行われる可能性があると述べた。

 今回のフォーラムは、有志の6人の研究者から成る「科学の健全な発展を望む会」が主催したもの。いずれも東大の大学院出身で、現役の東大教員として押川正毅教授(物性研究所)、影浦峡教授(情報学環)が参加している。

(山口岳大)

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