2019年11月22日、第70回駒場祭の1日目。東京大学広告研究会が主催する「ミス&ミスター東大コンテスト2019」のステージ付近で、1枚のビラを配り呼び掛ける学生たちがいた。「ミスコン・ミスターコン、そろそろ辞めません?」ーーー97年に始まり、長らく駒場祭を盛り上げてきた本コンテスト。その開催の是非がいま、問いただされている。開催に反対する人が、目をそむけるだけでなく声も上げて抗議するのは、なぜか。今後ミス・ミスターコンはどうあるべきなのか。例年参加者の募集が始まるこの時期に、考えてみよう。(全4回)
(取材・武沙佑美)
秋の風物詩、そのままでいい?
ミスコンテスト(通称ミスコン)とは一般的に、未婚女性を対象とした美人コンテストを指す。東大ミス&ミスターコンテストは出場者を東大の学部生に限定し、東京大学広告研究会が主催している。
例年出場者は4月から5月上旬にかけて広告研究会が運営するSNSなどを通じて募集され、毎年約60人の東大生が応募する。例年ミスとミスターへの応募人数は半々またはミスへの応募が若干多く、学年は2年と3年が多めだという。応募者のうちミスとミスターから各5人ずつが「ファイナリスト」として広告研究会に選ばれ、7月に発表される。
10人のファイナリストは駒場祭までの約半年間、SNSやイベントを通じてPR活動し、学内外で支持を集める。駒場祭では学内ステージ上で特技を披露したり「告白シチュエーション」を演じたりする。順位は毎日のウェブ投票および駒場祭期間中の当日票によって決まる。
コンテストに対する抗議の声が挙がったのは昨年の駒場祭の約1週間前。11月17日、学生有志団体の「東京大学のミス&ミスターコンテストについて考える会(当時、現『ミスコン&ミスターコンを考える会』)」がTwitterで活動の協力者を募った。22日には抗議のビラを配ったが、24日に予定していた抗議行動は準備不足などのため中止とした。現在はTwitterでの情報発信を続けている。
大学キャンパス内でのミスコン実施を非難する動きは、他大学でも見られる。19年11月には法政大学の学生センターが公式ウェブサイトにて、同コンテストは「『多様な人格への敬意』と相反するもの」で「人格を切り離したところで、都合よく規定された『女性像』に基づき、女性の評価を行うもの」だとして、学内施設を利用した開催を一切容認しないと発表した。ここ10年では、国際基督教大学や京都大学、大阪大学、早稲田大学、北海道大学、東京藝術大学などで、同様なコンテストの開催に対し大学本部や有志団体が反対を表明した事例がある。
海外でもミスコンを、画一的な「美」を規定すると批判し多様な容姿を尊重する動きがある。米国最大級のミスコンである「ミス・アメリカ」では、19年大会より水着審査が廃止された。主催者は今後、出場者を容姿ではなく情熱や知性、「ミス・アメリカ」の役割に対する考えなどを審査員との面接を通じて審査の対象とするという。
ジェンダーに関する社会課題は今、国内外で注目されている。長年大学の学園祭で行われてきたイベント一つをとっても、ジェンダー意識を高く持ち改めてその是非を問い直す姿勢が求められている。
【関連記事 東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?】
【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?②】ミスコン反対の声に、主催者の反応
【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?③】過去の出場者のホンネ
【東大ミス・ミスターコン、そろそろ辞めません?④】専門家は論点をどう見る
【記事追記】
2020年4月8日10時45分 冒頭のリード文末尾に「(全4回)」を追記しました。
この記事は2020年4月7日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
ニュース:新型コロナ 全部局対面型授業取り止め 不要不急の外出自粛を要請
ニュース:早大と協定締結 「日本の変革加速を」
ニュース:Society5.0 共同研究の成果を発表
ニュース:東大の足元は今④経営 より柔軟な経営へ 法人化以降の歩みをたどる
ニュース:駒場祭、ミス・ミスターコンを考える
企画:ミス・ミスターコンを問う
企画:ジェンダー教育を考える 価値観の違い乗り越え共存へ
研究室散歩:@技術経営学 坂田一郎教授(工学系研究科)
東大CINEMA:『一度死んでみた』
キャンパスのひと:上田開さん(文Ⅲ・2年)
※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。