区民が政治を考える
今年4月行われる統一地方選挙に向けて、各地方で動きが活発化している。本郷キャンパスがある文京区でも、低迷する区議会の投票率に見られるような、区民の地方政治への関心の低さを打開するべく、区民が中心となって、地方政治について考える機運が盛り上がっている。
身近な暮らしと区政はつながっているはずなのに、区政について、区民はあまり知らない…そんな問題意識のもと、文京区民によって結成された、「みらくるネット」が協力し、区民が区政について語り合う、「選挙に行こうカフェ」を取材した。
東大教授と考える
2月下旬、春日通り沿いの茗台中学校内に併設される茗台アカデミーに、文京区民約30人が集まった。モデレーターとして招かれた東京大学大学院教授の影浦峡先生が冒頭、会場に「隣の家からいつも子ども子どもの泣き声がするとき、誰に相談しますか?」という質問を投げかける。それに対して参加者は「民生委員」「地域」「児童相談所」などと答え、「区議のおじさんに相談しても仕方がない」といった痛烈なコメントも見られた。
このような市民の区議員不信とも呼べる状況に早くから気づいていたのは、この会の主催者の一人、文京区民の工藤玲子さん。「政治について、気軽に語り合うことがタブー視されているのではないか」と語る。カフェには現職議員や政治関係者を呼ばず、フラットに意見交換ができるように計らった。
みらくるネット提供のアンケートデータより。
2月に集計したもので、3割以上の人が選挙の予定があることを知らなかった。
区議の実態
続いて、影浦教授から「区議さんは一日何時間勤務だと思いますか?―給料はいくらだと思いますか?」という問いかけがなされた。
工藤さんの報告によれば、気になる議員報酬は月額で、
議長 91万7千円
副議長 78万6千円
委員長 64万5千円
副委員長 61万8千円
議員 59万6千円 (文京区HPより)
となっており、他にボーナスもあるそうで、年収一千万円を超えることもあるという。
とは言え、区議は忙しい。例えば無所属の人の一日は以下のようになっている。
区議会自体は10時から、途中休み時間も含みつつ17時まで続く。それ以外にも、町内の人と交流するためにラジオ体操に行ったり、夜も地元の会合に出席して情報を収集したりと、まさに生活そのものが議員である。
どこまでを区議に頼るべきか~区議さんのミッションとは?
「よく、議員さんに「相談」するって言いますけど、何についてどう相談するのでしょうか?」と、影浦教授は問う。考える例として出されたのが、「子どもの通う小学校の図書館がボロボロで本の数も少なく、司書もいない場合、どこに改善を要求するべきか」という問題。
「学校に直接言う」「教育委員会に言う」という回答もあるなか、「区議員に申し立てして、区議から教育委員会に言ってもらうことも有効ではないか」という声もあがった。
それを受け影浦教授は「区議さんを、区に関する制度の広がりや予算について共に考えていくパートナーだと捉えるならば、個人的だと思っていた問題を、区政の問題として捉えることができる」と語る。例えば、隣家から子どもの泣き声がするという問題に関しても、困ったり心配したりしているのは自分一人であるとも限らない。区議の方から、地域の問題として行政に働きかけてもらう、といった考えも可能であるという。
区議は「近所」にいる
参加者の一人である中原倫子さんは、3.11後の放射能問題について、区議員に相談し、要望書を出したことがあるという。「気になる地域の問題は、区民の声として届ければいい」と語る。
公園の放射線量を測定して欲しい、給食の安全を確認して欲しいなどの具体的な要望も、文京区のHP「区民の声」に送れば、区議員が目を通していたという。また、要望書を出した後に、区議会を傍聴するのも有効だそうた。「そうすれば区議も区の職員も緊張しますから」と中原さんは語る。
議論のためのアンケートデータを提供したみらくるネットの八木さんは、どの区議に投票すればいいかわからない、という市民の声に応えて、仲間と共に区民や区議にアンケートを行い、その結果を中立的に掲載した「みらくるネット」のサイトを紹介し、「相談しようにも、区議さんを知らないとのお話もありましたが、文京区議会のHPには区議さんの連絡先も公開されている。」と語る。
工藤さんは、HPで公開されている議会広報なども閲覧し、過去にその区議が何をしてきたのかを確認するべきであるという。
中原さんも同様に、「区議は身近で、それこそ「近所」にいる人。会いに行くこともできる」と強調し、交流することの大切さを述べる。
足元の地方政治
実は、先の図書館の問題も、区民の働きかけで、司書が入るようになったなど一部実現したという。
我々はとかく国政政治で大局を語りがちだ。しかし、足元の地方政治も大切なのは言うまでもない。特に本郷キャンパス周辺に一人暮らししている学生は、当事者意識をもって選挙に望んでもいいのではないだろうか。
(文責:沢津橋紀洋)
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