中学生の時、ミュージカル「ビリー・エリオット」の主役を候補者の中から勝ち取った未来和樹さん(文Ⅱ・2年)。その後も、通信制の高校に通いながら俳優として活躍していた。そして1浪を経て、東大に入学。受験勉強に取り組む中で考えていたことや東大に入学して良かったと思うことについて語ってもらった。(取材・柴田凜)
ゲーム感覚で楽しく勉強を
──東大を志望した理由は
将来について考え始めたのは、高2の秋に出演していた舞台が一段落した時です。選択肢としてあったのは、芸大や音大の声楽科を目指す、または勉強して良い大学を目指すという二つでした。僕はいろいろなことにチャレンジしたい人間なので、それができる環境を作っておきたいなと思った時に東大を目指すことが自分にとって良いのかなと思いました。
──1浪を経て東大に合格しました。現役時と浪人時の過ごし方の違いを教えてください
現役の頃は本当に時間がなく焦っていたので、1日中勉強をしていました。問題を解くことはゲームみたいで楽しく、勉強自体は好きでしたが、ひたすら勉強しているうちにその「楽しい」という感覚がなくなって、つらいものになってしまったんです。それで浪人した時は生活にメリハリをつけようと思い、散歩をしたりダンスのレッスンに通ったりして勉強以外のことをする時間を作りました。勉強時間そのものは少し短くなりましたが、勉強に対して楽しいという感覚が戻ってきて効率が良くなったと感じました。
──受験当日から発表日までどう過ごしましたか
現役の頃はどきどきしていましたが、浪人した時はやりきった感があったので、これでダメだったら仕方ないなぐらいの気持ちでした。出来ることは全部やったから大丈夫と自分に言い聞かせて、東京に引っ越す準備をしていました。
前向きに次のチャレンジに挑む
──東大に入って良かったと思う点は
出会う人がとても面白い点です。勉強だけでなく、さまざまな分野で活躍している人たちが多いなと感じています。この人にはかなわないと思う人に高頻度で会えるので、その人たちから自分も刺激を受け、追いつけるように頑張ろうと思うことが多いです。自分を駆り立ててくれている良い環境だと思います。
──今後の展望・成し遂げたいことは
今まで僕は周りの人や環境に助けられてきたので、今後は自分が培ったものを社会に還元できればと思っています。
具体的な目標は起業することです。自分が生きてきたエンターテインメントの世界をより良くできたらと思っています。それで今は子ども向けのダンススクールを開こうとしています。20年間踊ってきた中で研究してきたかっこよく見える工夫や効率的な成長の方法を教えたいです。
そして1番やりたいことは、ミュージカルのプロデュースです。今のミュージカルの世界では、実力がある人が芽を出す機会がなかなかないことが一つの問題点だと感じています。そういう人たちを集めて、表に出る機会を僕が与えることができたらと思っています。
──受験生へのメッセージをお願いします
成功した経験は次のチャレンジのエンジンになり、挫折した経験は次につまずいた時のクッションになると考えています。そう思えるのは、現役で落ちた時に昔の挫折経験が心のクッションになったからです。実はビリーを演じていた頃に、膝を痛めて中途半端な形で降板することになってしまったんです。2年間、全てを捧げていた舞台にもう二度と立つことができないのがすごく悔しくて、今までの人生で最大の挫折を経験しました。それを思い返した時に、受験に現役で落ちるぐらいだったらまた1年後チャレンジできるし、大したことないなという思いがありました。そのおかげで浪人が決まった時も前向きな気持ちになれたのかなと思います。
もちろん何かに挑戦して、成功することはうれしいことだし、自分が次のステップに踏み出すことにもつながります。しかし失敗したりくじけたりしたとしてもその経験は次くじけた時に傷を癒して前向きな気持ちにしてくれると思うので、チャレンジして悪いことは一つもありません。失敗を恐れずに、たくさん努力して自分の力を出し切ることを大切にしてください。
【記事修正】2024年2月17日午後3時13分 リード文の誤字を修正しました。