──スマホを受験勉強に活用する方法は
スマホを受験勉強に用いるメリットとして、通学時間などでも手軽に使用できることがあります。参考書を広げられないような時間も勉強時間に変えているユーザーさんは上手に取り入れられているな、と思いますね。また、X(旧・Twitter)やスタディサプリを使って、オンライン上で同じ大学を志望する学生とつながれると、モチベーションの維持・向上になるのではないでしょうか。
mikanのような英単語暗記アプリに限定すると、スマホでは音声を手軽に聞けたり苦手な単語をアプリが自動的にチェックしたりします。エドテック(Edtech。IT技術を融合させる新しい教育のこと)の主眼は学習の効率化で、そこを上手く取り入れられると良いと思います。
──スマホは受験勉強の邪魔になるという意見もあります。どのようなデメリットがあると思いますか
つい勉強に関係のない動画などを見てしまったりすることでしょうか。息抜き程度ならかまわないと個人的には思います。むしろ、ホーム画面の固定位置に勉強系アプリを置いたり、勉強系アプリの通知をオンにするなど、スマホ内の整備をする方が重要だと思います。
また他のデメリットとして、スマホアプリでの学習により、長期的に自分で考える力を養えないこともあると思います。本であれば自分に合った学習スタイル、例えば付箋の貼り方やマーカーの引き方などを試行錯誤して確立していけますが、スマホアプリではシステムに沿った画一的な学習しかできないためです。mikanでは学習方法が決まっているモードとカスタマイズ可能なモードを提供し、学習の自由度を高める工夫をしています。
──mikanを開発した背景を教えてください
共同創業の友人と私が東大工学部4年生の時、アメリカ留学のためTOEFLの勉強をしていましたが、良いアプリがありませんでした。その時、マッチングアプリのTinderを見て、スワイプするシステムが単語を書いたフラッシュカードをめくり、意味が分かるものと分からないものに分ける動作に応用できるのではと思いつきました。プロトタイピング(製品を開発する前に、試作品を作って使い心地を検証すること)してみたら、使いたいと言ってくる友達が意外と多くて。それでリリースに至ったという感じです。
──受験生にとって、mikanはどのような存在であってほしいと考えていますか
mikanのユーザーは小学生から社会人と幅広いので、特別受験生に配慮していることはありません。ただ、受験生は学校指定の単語帳を用いることが多いですが、種類は学校によってまちまちです。なので、できる限りさまざまな単語帳を用意し、それぞれの受験生が日々使っている単語帳をmikanでも使えるようにしています。
mikanはキャラクターが声掛けをしたり、校内や全国のランキングを作り学習継続日数を競えるようにしたり、早押し形式の単語テストなどさまざまな学習形式を用意したりと、継続して勉強できるサービスを提供しています。やる気を出すには、まずやることが大事です。頑張ろうとは思うけれど頑張れない、そんな受験生を支えられるような存在でありたいと思います。
──最近大学受験において、思考力を重視する傾向が強まっています。その中で、今後どのようなサービスを提供しようと考えていますか
傾向が変わっても単語の勉強は重要だと考えています。単語の知識、例えば発音記号をそのまま問う問題は少なくなるかもしれませんが、情報を読み取り思考する上で、単語の知識は不可欠なものであり続けると思います。
mikanとしては、現在提供している英検やTOEIC対策に加え、英語に関するあらゆる学習ができるようなアプリを目指しています。単語の暗記以外に、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングと、単語知識をアウトプットし4技能を伸ばしていくサービスにも力を入れたいです。この拡充で、思考力重視の問題の学習も提供できるようになっていく予定です。
──最後に、受験生へのメッセージをお願いします
自分が東大の受験生だった時を振り返って、あの時努力して良かったなと思います。受験勉強は一定のルールの中で成果を出す練習とも捉えられます。受験生のタイミングで志望校合格の先を見据えたり、受験勉強の意義を見出すのは難しいかもしれません。ですがここで一度、努力するという経験を積んでほしいです。
髙岡和正(たかおか・かずまさ) 株式会社mikan代表取締役/東大在学中、2014年に株式会社mikanを共同創業。2019年に代表取締役に就任。
【記事修正】2023年9月21日15時00分 「高」を「髙(はしごだか)」に修正しました。